目次&メニュー
はしがき
1. 和訳するということ − 問題を例にして
コラム 「直訳と意訳」
3.話者の考えをつかむ − 助動詞・副詞・挿入・比較・強調・否定
コラム 「誤訳」
4.語句の意味をつかむ − 名詞化・指示語・代表現・冠詞・前置詞・省略
コラム 「常識」
《索引編》
構文
語句
訳しかた
問題
最近、英文和訳は目の敵にされています。訳して読むようでは英文が読めるようになるわけがないだの、日本語を通さずに学習するのでなければ英語の力はつかないだの、いろいろなことが言われています。みな一理あることです。たしかに英語は、日本語なしに英語の海を泳がないと泳ぎを覚えるのはむずかしいでしょう。
しかし、そういう流れがある一方で大学入試においてはあいかわらずよく和訳問題が出題されています。英語学習には日本語はいらないとしても、学習の成果を問うには和訳問題はたいへん役に立つのです。なぜなら、語句・文法・構文・内容把握・国語表現のそれぞれの力のすべてを多角的に試すことができるからです。和訳問題は一種の総合問題です。これからも大いに出題されつづけるでしょう。
本書は研究社出版の高校生用学習誌『高校英語研究』に92年4月から93年3月まで連載された「英語構文解析ゼミ」をもとにしたものです。当時は主に構文についての解説にしぼって書きましたので、訳しかたについては不十分でした。今回はそれに手を入れ、だいぶ書き直して訳しかたや語句の解説も十分なものに改めました。それほど厚くない一冊ですが、和訳問題がそもそも総合的な性質を持っているので、これ一冊の内容をかみしめれば英語についての幅広い知識と力がつくと思います。また、そのように諸君が利用してくれればと思います。
編集部の方たちにはたいへんお世話になりました。一々お名前をあげるのは略させていただきますが、たいへん感謝しております。
本書の使い方
第1章は、どのような角度から和訳問題というものをとらえるべきかを、実際の入試問題を例にして述べたものです。序論として読んで、和訳問題は決して怖くないという自信をつかんでください。第2章からの各章は2ページずつの見開き形式になっています。
左ページトップは、【問題】です。かっこ(<>)で示したものは、その文章の内容です。問題末尾に出題校を示しました。その下の【語句ノート】は単語・熟語の注です。語句の注は実際の入試問題にはほとんどついていないのが現実ですが、本書では学習のために積極的につけています。語句のなかには、くわしい説明の必要なものもあります。そういったものはここでは扱わないで、【訳しかた】のところで説明します。
語句ノートの次は【構文の把握】のセクションになります。下線部訳問題では構文の把握がまず第一のポイントになりますから、このところは本書でもメインのセクションのひとつです。重要なものについては、下線部以外であってもくわしく解説しています。このセクションで使われている記号には、以下のものがあります。
1.5文型関係S=主語にあたる部分
V=動詞にあたる部分
O=目的語にあたる部分
C=補語にあたる部分
2.かっこ記号 ( ) 省略できる部分 < >語句のかたまり
3.その他X、Y、Z、A、B、Cは語句を表す
構文は文を形からとらえる方法ですから、記号を使う必要があります。簡単な文なら、いちいち記号を使って分析するまでもありませんが、複雑な構造のセンテンスについては、語と語、語句と語句の関係を厳密にとらえながら読まなければ、正確に意味をとることができません。
■第2章以降右ページは、おもに【訳しかた】と【全訳と解答例】で構成されます。これらは実際に問題を解いてみてから利用するとよいでしょう。【構文の把握】と、それより前の項は、訳す前に読んでおいてもかまいません。
最後は【全訳と解答例】です。これを見ながら自ら答案を添削してみてください。
本書全体の構成については目次を見てください。全体は4章です。各章のねらいは、その章の最初にある扉のページに書いてあります。 第2章以下の最後のページは、コラム記事になっています。英文和訳のこつなど、訳すことについての基本的な知識を解説しています。 索引はまとめとして役立つように、充実させました。構文の索引、語句の索引、訳しかたの索引、問題の索引の4部から成っています。本書をやり終えた後の知識の確認に使うとよいでしょう。本書はうしろから勉強することもできます。
─────────────────────
1. 和訳するということ
─────────────────────
「次の英文の下線部を和訳しなさい。」 下線部和訳問題の指示として一般によくあるものがこれです。
−和訳する?そうか、和訳か。
私たちは、すぐに「和訳」にとりかかります。和訳するということがどういうことなのか、もちろんわかっているからです。
ところが、訳を進めるうちに、ここはいったい何のことを言っているのだろうかとか、この不定詞は何用法のものだろうかとか、わかっていることを採点者に確実に知らせるにはこうした方がいいだろうか、いや、ああした方がとか、どうもこの日本語はおかしいなとか、ありとあらゆる迷いや疑いが次から次へと出てきて私たちを悩ませます。もう少し楽にできないものかなぁ?と誰しも思うはずです。試験場での苦労をできるだけ少なくするにはいったいどうすればいいのか、本章はひたすらそのことだけを追究します。
そもそも、和訳するとはいったいどういうことなのでしょうか?私は和訳とは一種のコミュニケーションであると考えます。相手の姿こそ目の前にありませんけれども、その人の言ったことがそこにあるのはたしかです。その内容を活字を通してつかみ、つかんだところを今度は自分の国語で表現します。相手がそこにいてその人がバイリンガルなら、言いたいのはこういうことなのでしょう?と問い返して確かめることさえできるようなことです。現実に相手がそこにいることはないので、本来のコミュニケーションが成立することは決してありませんが、それでも、根本の部分では、コミュニケーションに非常に近いものと言うことはできると思います。
コミュニケーションの技は応用技です。会話するとき、また、文章を読んだり訳したりするとき、私たちは単語・語句・構文・文法・文章のすべてのレベルでのすべての知識と技を総動員します。しかし、そればかりではありません。経験、知識、境遇、職業、感情などなど、人間に関係することいっさいがコミュニケーションを取るときの背景としてかかわってきます。聞いたり話したり、読んだり訳したりすることは、私たちはふだんなにげなくしていますけれども、あらためて考えてみると、ものすごく複雑に入り組んだ総合技だということがわかります。
この技を身につけるには、当然のことながら、長い時間がかかりますが、大学入試を目前に控える時期に、そうとばかりは言っていられません。そこで、技を単純化して読みと表現の2つに分解して考えてみることにします。英語の問題のうち、解答選択式の読解問題は、読みまでしか要求されません。和訳問題や英作文は、読みと表現の両方が求められます。以下では、まず読みに関係することを、そして次に表現に関係することを、実際の入試問題によって解説します。
コミュニケーションの大前提は、相手が誰で、どういう人なのかわかっていることにあると思います。どこの誰ともわからない相手からかかってきた電話には十分には受け答えができないものです。ところが、入試問題の英文では、出典を明記する大学はほんの少数派です。また、どのような文章なのかを問いの指示のうちに明示する大学も、かなり出てきてはいますけれども、やはり大多数ではありません。相手不明の電話と同じで、非常に困ったことですが、現実は現実、私たちとしてはまず相手をなるべく特定するようにしなければなりません。文章の筆者がどこの国の人なのか、どういう職業の人なのか、男なのか女なのか、年齢はどのくらいなのか、といったことをできるだけつきとめるように努めます。これはたとえば、女性が男言葉で話すような誤訳をしないためにも絶対に必要なことです。ふつうこういったことは、文章を読みながら無意識のうちにするものです。ふつうならば、もちろんそれでいいのですが、試験問題では念を入れるに越したことはありません。意識してこのような眺めかたをしたときに別の読みかたが出てくることがあります。
文章の内容がどのような文脈に所属するものなのかを特定することもたいせつです。ここで言う文脈には、2種類があります。ひとつは、文化の中でのジャンルと言ってもいいものです。その文章の内容が、広く文化の中のどのような分野に所属するものなのか、ということです。地球環境問題は流行ですから、皆さんよく知っていると思います。これは人間の社会のことなので、文化の中の社会的なジャンルに入ります。文化の中にはほかに、学芸に関係するジャンルもあります。これはさらに、教育や言語や歴史、科学などなどに分化します。入試問題では伝統的に後者の学芸ジャンルの方が主題率は高いようです。書いた人の特定と同様、道に迷わないためにも、文化の文脈の特定も分かるかぎりで行なうようにします。もう一つの文脈とは、文章そのものが、より長い文章からその一部を切り出した短いパッセッジである場合に関係すことです。このときの文脈とは、そのパッセッジを含む、より大きな文脈のことです。部分を切り出して出す出題のしかたは、乱暴な部類に入るでしょうが、まれではありません。不幸にしてそのような問題に当たったときには、文化ジャンルの特定とともに、本体であるところの文章の種類(小説、ジャーナリズム、論文 etc)も考えに入れなければなりません。ただ、このときできることは、たぶんそうだろうというように、あたりをつけることだけになるでしょう。完全につきとめるのは不可能です。
以上のことは実際にはほぼ一瞬ですむことです。時間に余裕がないからできないとは言えません。では、次の文章により、実地に練習してみましょう。
【練習】読んで、後の設問に答えよ。
Illness and death are not failures. It is how we face up to our illness andhow we take on the challenge of our mortality that determine whether we are successes or failures. No matter how sick we are or how close to death, as long as we are alive we have the chance to make something of our lives. When I was running in the New York Marathon not long ago, a woman on a street corner shouted out, "You're all winners." She knows more about life than most and made the entire run worthwhile for me. If we take on the challenge of life, we are all winners.
【設問】
1.筆者は特にどのような人と思われるか。 2.この文章のスタイルは次のうちのどれに近いと思われるか。
a.学術論文 b.ニュース記事 c.随筆 d.手紙 3.この内容は文化のジャンルでいうと次のどれに入ると思われるか。
a.宗教 b.哲学 c.処世 d.社交
<設問1筆者の特定>大きなヒントとなるのは、the New York Marathonです。このマラソンは競技としてのマラソンではなく、一般市民参加のイベントマラソンです。ホノルル・マラソンや青梅マラソンのようなものです。車椅子の参加者の姿をテレビなどで見たことがあるのではないでしょうか。
こういった常識をもとにして読むと、冒頭にすでに illnessや deathという深刻な言葉があるのですから、筆者は a handicapped personか、あるいはなにかしら病気にかかっていて、もしかしたら近い将来の死の宣告を受けている人かもしれないということが浮かび上がってくるでしょう。それなのにマラソンというたいへんなことに参加しています。
<設問2文章スタイルの特定>おもには用語などにより決定しますが、この文章では地の文に一人称の Iが現れているので、学術論文やニュース記事ではないとほぼ決定できます。また、文章の出だしのところの調子から、手紙にしては重すぎる内容とわかります。新聞や週刊誌の読者投稿欄の文章かもしれませんが、そのようなエッセー的なものと思われます。小説の可能性もなきにしもあらずです。 Iが架空の存在なら小説ということになります。 <設問3文化のジャンルの特定>文章内容を読み取って決めます。人生どう生きるべきかがここには書かれてあります。「処世」のジャンルに入ります。
<解答> 1. (例)病気の身でありながらマラソンにまで参加するような人。 2. c 3. c
書いた人の特定、文脈の特定は、文章の大枠からはみ出さないようにして訳すために必要です。推定を正しい方向に持っていくには、あなた自身の常識というものがキーポイントになります。常識は広く身につけておくべきです。
それでは、次に、筆者の言っていることにもっと深く迫ってみることにしましょう。この段階では、筆者の使用している言語についての十分な知識に基づいた、深い読みが重要になります。誤解につながるワナはたくさんありますから注意して読み取らなければなりませんが、基本は構文の正確な把握と語句の解釈、気をつけたいのは、ひとつひとつのセンテンスの意味同士の響き合いからかもしだされる、文脈としての意味、それに、主張のある文章ならその主張です。
【練習】読んで、後の設問に答えよ。
Illness and death are not failures. (1)It is how we face up to our illness and how we take on the challenge of our mortality that determine whether we are successes or failures. No matter how sick we are or how close to death, as long as we are alive we have the chance to (2)make something of our lives. When I was running in the New York Marathon not long ago, a woman on a street corner shouted out, "(3)You're all winners." She knows more about life than most and made the entire run worthwhile for me. If we (4)take on the challenge of life, we are all winners.
【設問】
1.下線部(1)の文と同じ構文を含む文を次から選べ。
a. It is a pity that she is not so well.
b. It is not so much his ideas as his ideals that are bad.
c. It is perhaps a sign of my advancing years that I often forget people's names.
2.下線部(2)を日本語にせよ。
3.下線部(3)は、女の人がだれに向かって、どのような意味合いにおいて言ったものと思われるか。
4.下線部(4)を日本語にせよ。
5.筆者の主張の要点を述べよ。
1, 2, 4は読みの基礎知識と関わるものです。 3と 5は深い読みと関係します。
<設問1構文>強調構文です。 thatの後を見れば区別できます。 bのみ動詞がきています。 a, cは It is natural that ...「..は当然だ」のなかまの文で、判断を言う述部 be natural(be+形容詞)が be a pityや be a sign of my advancing years(be+名詞)にとってかわられたものです。
[訳] a.彼女があんまりよくないと聞いて残念だ。 b.悪いのは彼の考えよりも理想の方だ。 c.人の名前を忘れるのは、たぶん年のせいだ。
下線部訳問題の下線部の文は、98パーセントがいわゆる重要構文を含みます。ですから、どのような構文が隠れているのか構文を見分けることがとりわけたいせつです。構文の参考書・問題集などを使ってよく勉強していて知識が十分あったにしても、やや長めの、生きている文章の中に出てくると、気づかなかったり見逃したりしがちです。たとえば、みなさんも中学以来おなじみの構文<so〜 that ...>は、 soも thatも単独で使われることもあるので、1つの構文と気づかないことがあります。 soと thatのあいだになにか割り込んで、あいだが広くあくと、そうなりがちです。ほかにも<not〜 but ...>(〜ではなく。..)や<sometimes〜 sometimes ...>(ときには。..,またときには。..)など、複雑な文の中に埋もれるとなかなか気づきにくくなるものは多いですね。強調構文や<not only〜 but ...>や<not so〜 as ...>などは形がはでですから、見落とすことは少ないと思いますが。
構文見落としに対する対策は、意識して構文を確認することしかありません。特に soと thatのように組で使われているものを見落としていないかどうか、日本語にした後で再確認する習慣をつけておくことです。うっかりやぼんやりは厳禁です。
<設問2熟語> make something of our livesは熟語です。 make something of one's life=「成功する」ということを丸暗記して知っていれば、なんなく片づきますが、もし初めて見るブラックホールであった場合には、文脈から類推したり、なんとか考えあてたりするしかありません。
文脈をとらえるヒントとしては、 <... failures... successes or failures ... winners ... winners ...>のつながりがあります。たぶん成功や失敗に関係のある動詞なのではないかと、ここから見当がつきます。また、この熟語の場合、熟語の成り立ちを見て意味の見当をつけることもできます。 make〜 of ...がふつう「..から(...を材料にして)〜を作る」の意味であることと、 somethingに「たいしたもの、たいしたこと」の意味があることの2点を足し合わせて、「人生を材料にしてひとかどのものを作る」と考え、文脈からのヒントと合わせて「成功する」の意味を導き出すように持っていけるならば大成功です。ただし、このやり方は、起源や由来のはっきりしない、りくつで割り切ることのできないイディオムには通用しません。そのときには、ひたすら文脈を信頼して当てるようにします。
なお、 lifeが livesという複数形になっているのは weという複数形に対応しているからです。私たちそれぞれに複数形で言えるような、さまざまな人生の形があります。
<設問3意味内容の把握> You're all winners.は単語もやさしいし、構文もかんたんですけれども、その意味内容をつかむのはかんたんではありません。国立大学系統の和訳問題にはこの種のものがよく登場します。文脈をよくつかんで、内容把握します。
筆者がたぶん身体障害者か車椅子の病人かであることは、最初の練習問題のところで見たとおりです。そういった人たちが、おそらく一団となって、先頭からはだいぶ遅れて走っているのだと思われます。マラソン・レースそのものの勝者でないことはあきらかです。しかし、女の人は人生というものを心得ていて、レースには負けているけれども、自分には、あるいは与えられた人生には勝っていると伝えたかったのでしょう。文章の冒頭と末尾に見られる筆者の雄叫びはここから触発されたものというよりは、雄叫びが先にあり、この事例の方が後からついていったものでしょうが、とにかく、人生の具体的なひとこまと筆者の思考が響き合っていることはたしかです。
<設問4熟語> take onという句動詞の意味がポイントになりますが、ふつうは take on〜=「〜を引き受ける」と覚えているのではないでしょうか。研究社の Lighthouse英和辞典にも、第1の意味として「引き受ける」が載っています。しかし、この文章の take onはその意味では不十分です。「引き受ける」の持つ消極的なニュアンスがこの文章に合いません。筆者には積極的な意気込みがあります。「人生からの挑戦」に対して「立ち向かう」意気込みがあります。本文第2行目の face up to〜 (〜に正面から取り組む、〜に真っ正面からぶつかっていく、〜に勇敢に立ち向かう)という、きっぱりした気持ちを表す句動詞と同列に並んでいることにも注意します。
受験用の単語集や熟語集にはおそらくこの意味では載っていないと思われます。仮に「引き受ける」と覚えていて、しめしめと思ってそのままあてはめると痛い目にあうことになります。読むのになまじな知識はかえって邪魔、読みに関しては、なまじな知識なら、ない方がずっとよい、と言っておきましょう。
<設問5文章の要点の把握>相手の言っていることの要点の把握は、コミュニケーションの最低条件でしょう。把握しているのとしていなのとでは、訳にも差が出ることになります。「病人であっても人生の敗者とはかぎらない。人生からの挑戦にかかんに立ち向かう者こそ勝者なのだ」という主張を読み取ります。
<解答> 1. b 2.成功する(勝つ) 3.マラソンの後ろの方になっている筆者たちに向かって、決して負けてはいないわよというつもりで言った。 4.人生からの挑戦に立ち向かう 5.病人であっても人生の敗者とはかぎらない。人生からの挑戦にまっこうから立ち向かう者こそ勝者である。
この【練習】が、いわゆる読解総合問題の形式になっていることは、象徴的なことととらえてください。和訳問題に答えるには、読解総合問題的な関門を一度くぐらなければならないわけです。よい訳は、よい読みの産物です。 では次に、出題された元の形で文章を示します。今度はもっと深く読んでみましょう。
【問題】次の英文を日本語になおせ。
(1)Illness and death are not failures. It is how we face up to our illness andhow we take on the challenge of our mortal ity that determine whether we are successes or failures. No matter how sick we are or how close to death, as long as we are alive we have the chance to make something of our lives. (2)When I was running in the New York Marathon not long ago, a woman on a street corner shouted out, "You're all winners." She knows more about life than most and made the entire run worthwhile for me. If we take on the challenge of life, we are all winners.
(広島大学)
<1行目 Illness and death are not failures.>いきなり否定文が来ているので驚かされます。これはいったいどういうことなのでしょうか?
not〜とあったら、論理の公式として<not〜but
...>というのがありますから、一応、 but what?と考えます。
butがことばとしては現れていなくても、意味としてはある場合があるからです。
whatにあたる内容を、続く第2文の内容に探してみると、「成功か失敗かは病気や死への立ち向かい方で決まる」ということなので、論理的な相関関係は見当たりません。第3の文、第4、第5。..と探しても、出てきません。
となると、この not failuresは、もっと違う文脈と関係していると、考えざるをえないことになります。何でしょうか?
世間の考え方ですね。世間では一般に病気や死というと、人生での敗北ととる、だが、しかし。..というつながり方です。
つまり、このときの文脈は、文章の範囲内にかぎられた狭い文脈なのではありません。もっと広い、文化や人の考えかたというような、世の中の現実の文脈です。そこから文章の中のこの否定文につながってきているのです。
<3行目
the challenge of our mortality>この内容を把握するのは非常にむずかしいと思います。
ofにより名詞2つがつながれた、このような構造は、名詞化形と呼ばれることがあります。名詞化形というのは、動詞の形、あるいは形容詞の形、あるいは文の形が元にあって、そこから名詞的な語句へと転化した構造のことですが、この
the challenge of our mortalityをその構造としてとらえると、 Our mortality challenges
us.の文を元の形として想定できます。これは「人間の死の宿命が私たちに挑戦をしかけてくる」という意味です。つまり、 Our
mortalityの方から我々に challengeしてくるという意味です。
challengeという動詞は、たとえば He
challengd me to fight.(彼は私に戦いを挑んだ)のように、 <challenge (人)
to〜>の形を取り、「(人)に挑戦して〜まで持っていく、 (人)に挑んで〜させる」という意味を表すことがあります。それで、 Our
mortality challenges us to what?を考えなければなりませんが、 to
whatにあたるのは、戦うこと、死の宿命と戦うこと、と捉えることができるでしょう。日本語の「チャレンジする」はコーラの一気飲みにチャレンジするのように、ことがらを目的語として取りますが、英語では人を目的語として取ります。このあたりの事情を知らないと、誤訳してしまうかもしれません。
challengeという語はアメリカ人の好きな語なので、要注意です。
あとは、宿命が人間に挑戦してくるということがもしかしたら疑問として残っているかもしれませんが、これは擬人法というものです。英語では
Fortune(運命の女神)や
Nature(自然の女神)のように大文字で始めて、人でないものを人にたとえることがあります。ここでは大文字になってはいませんが ,
ourをつけることで大文字にするのと心理的には同じことになっています。
<最後の If〜の文>これは If he
comes late, we'll go
ahead.(彼が遅れたら、私たちは先に行こう)のような文とは少し違います。主節と従節で時制が同じ(take onと
areはどちらも現在形)であることに注目してください。このようなときの ifは、「もし」という通常の条件を表す
ifとは少し異なり、「〜のときにはいつでも」とか「〜であるかぎり」の意味になります。
このような読みに基づいて、最終段階の和訳に進むことになりますが、この段階になると、訳といっても、自分の意見を文章によって書き表すのと変わりないことをすると見ていいでしょう。文章を書くことには、たとえ母国語であっても、話すのとはまた別のむずかしさがあります。秘訣は、書かずにつかむことはできません。文章の極意を書いた文章読本にあるような要点を知ればすむものではありません。自分で書かなければこつは決してつかめません。
それでも、一つだけ言えることがあります。文章というものはたいてい、不特定多数の者へ向けて作者から発信されたものなので、訳す私たちも同じように、不特定多数に通じるように書き表さなければならないということです。この点に注意しながら、次に示す解答例を採点、講評してみます。(1)(2)それぞれ10点ずつと仮定します。
【解答例】(1)病気や死は失敗ではない。私たちが成功か失敗かを決めるのは、どのように私たちが病気に立ち向かい、どのように私たちが
mortalityのチャレンジを受けて立つかである。どれほど病気であっても、または、どれほど死に近くても、生きているかぎりは人生から何かを作る機会はある。
(2)少し前に私がニューヨーク・マラソンに参加して走っていたときに、街角にいたある女の人が「あなたちはみな、勝ってるわよ」と叫んだ。彼女は人生について非常によく知っている人で、マラソンの全体を私にとって価値あるものにしてくれた。私たちが人生のチャレンジを受けて立つかぎり、私たちはだれでも勝者なのである。
【採点と講評】減点の対象になりうるところが6か所あります。 1.私たちが成功か失敗か 2.mortalityのチャレンジ 3.人生から何かを作る 4.人生について非常によく知っている 5.マラソンの全体 6.人生のチャレンジ
です。
1.
successes, failuresの意味をとりちがえています。「成功」は successです。 aをつけたり複数形にしたりして a
successや successesというと「成功した事、成功者」の意味で、ここでは「成功者」です。
failuresについても同じことが言えます。「失敗者、敗者」などの訳が適当です。マイナス1。
2.まず、「日本語になおせ」の指示に合っていません。分からない単語をそのまま英語のスペルで埋め込んだ訳文は、日本語の文章とは認めてもらえません。DNA(デオキシリボ核酸)などの略語については、DNAと表記してまったく問題ないと考えます。新聞も、この表記を使用しています。多くの新聞は最も多くの大衆を日常的に相手にしていますから、きみたちの日本語表記の基準として信頼してよいものです。
3.「チャレンジ」も減点対象です。「チャレンジ」はたしかに岩波国語辞典にも三省堂明解国語辞典にも載っている語ですけれども、日本語ではたとえば「人生にチャレンジする」とか「入学試験にチャレンジする」とかのように人がある難題に挑戦するという意味合いで使います。しかし、ここでは、「人生が人に挑戦をする、死の宿命の方から人間に挑戦をしかけてくる」といった本来日本語構造にない意味あいになっていますから、「人生が人にチャレンジする」とか「人生のチャレンジ」とか言うと、意味不明か意味あいまいになってしまいます。意味不明・意味あいまいは、もちろん減点されます。
mortalityがマイナス1で、合わせてマイナス3。
4.比較的うまく考えましたけれども、意味あいまいなので、マイナス1。
結局、 (1)については得点は5点ということになります。ちょっとあぶないですね。次に(2)の方です。
5.「人生について非常によく知っている」は
She knows more about life than
mostの部分の訳ですが、だいぶ細部を無視した大胆な訳しかたになっていると言わざるをえません。 mostは代名詞で、名詞を使って表すなら
most peopleということです。「彼女は大方の人たちよりは多く人生について知っている」と筆者は言っています。
ということは「人生について非常によく知っている」ことに通じないかというと、たしかに通じはします。しかし、通じるところがあるからといって許容範囲を広げるなら、的確な訳ではなくなってしまいます。過不足なく原文の意味を伝える訳こそ真の訳です。この解答例は、原文の意味以上の意味を含ませてしまう、訳しすぎの訳になっています。マイナス2。
6.マラソンの全体、と言ってしまうと、そのイベントの全体ととられかねません。意味あいまいなのでマイナス1。
(1)が5点、 (2)が7点で、計12点。どうやら合格線上でしょうか?
コミュニケーションの観点から眺めると、出題者や採点者はたいへん寡黙な人たちです。試験というものの性質上、そうならざるをえないわけですが、出題者は必要最低限しか言ってくれませんし、採点者にいたっては、こちらとのコミュニケーションはいっさい拒否します。そんなとき、きみたちとしては、ルールを守るしかありません。出題者に対しては、その指示に忠実に従うこと、採点者に対しては、その人たちが持っている採点基準に合うような答えかたをすることです。どこでどう減点されたのかをよく検討しておいてください。次は模範解答例です。
【解答】病気や死は失敗ではない。人が成功者なのか失敗者なのかは、どのように病気と向かい合い、どのように死の宿命からの挑戦を受けて立つかによって決まる。どれほど病気が重かろうが、また、どれほど死に近い位置にいようが、生きているかぎりは勝つチャンスはある。少し前に私がニューヨーク・マラソンに参加して走っていたときに、街角にいたある女の人が大声で言った。「あなたちはみんな、勝ってるわよ」と。その人は人生について大方の人たちよりは多くを知っていて、そのときの走り全体を私にとって価値あるものにしてくれた。私たちが人生からの挑戦を受けて立つかぎり、私たちはだれでも勝者なのである。
日本語は荒れまくっています。カタカナ語一つとっても、たとえば「コミュニケーション」という語を日本語として認めるかどうかの問題があります。「コミュニケーション」なる語は単に英語の
communicationをカタカナ表記しただけではないか、日本語とは認められないという立場の人もいるでしょう。しかし、そのように言う人に対して、じゃ「アメリカ」はどうなんだ、「アイスクリーム」はどうなんだ、あなたもふだん使っているじゃないか、と反論する人もいるでしょう。ほかにもさまざまな問題が日本語にはあります。方言の問題もあります。口語と文語の問題もあります。俗語、新語、流行語、外来語、略語、やまとことばと漢語などの問題もあります。また、送り仮名などの表記法の問題もあります。人により、世代により、住む地域により、生きかたにより、文章の書きかたもさまざまです。生きている日本語は基準の嵐そのものです。
しかし、個人として文章を書くときには、ある一定の基準を無意識のうちに追い求め、また従ってもいます。この基準はコミュニケーションを重ねるうちに、次第に練られていきます。その意味で、たくさん書くことはぜひとも必要なことです。
2.文章の流れをつかむ
───────────────────────────
接続詞│関係詞│分詞構文
同格│並列│倒置│対比
文章には流れというものがあります。文章の源は最初のひとつのことばだが、ことばがことばを呼んで文になり、そのまた文が新たに文を呼んで文章となります。文章は川のように長く延びていて、流れがあります。流れを泳いでいくことがすなわち文章を読むことにほかなりません。
文章の流れは、目には見えない、意味という透明なつながりによって生み出されます。この流れは、川のような一様な流れなのではありません。押し止めようとする勢力もあります。急な逆流のあることもあります。並行した2本になることもあります。乗りそこなえば、訳はそもそも不可能となります。どう泳いでいくべきか、そのこつを本章でつかむことにしましょう。
【問題1】<文明>下線部を日本語に訳せ。
As an abstract idea, civilization is not very easy to pin down, but civilizations as historical facts are easier to discuss. Even when historians disagree about how many there have been, or whether a particular candidate should be included in the list, or on many other questions, there is a list of civilizations usually accepted as such by virtually all serious students. Those of ancient Mesopotamia or Egypt are on it and so are those of China, and of classical Greece and Rome, to name only some obvious instances. (滋賀大学経済学部)
【語句ノート】
□ pin down「はっきりさせる、明確にする」
□ civilizations as historical facts「史実としての文明」
□ even when〜「たとえ〜でも」(=even if〜)
□ a particular〜「ある特定の〜」
□ the list「リスト」(civilizations as historical factsのリストのこと)
□ as such「そういうものとして、それなりに」
□ virtually「事実上、実質的に」
□ serious「真剣な、まじめな」
□ student「研究者」
□ to name「名指しすると、名前をあげると」(toは「条件」を表す)
□ instance「例、実例」
【構文の把握】
語や語句の並列された構文を並列構文といいます。並列される語や語句は形式が同じものになります。形式の異なるものが並列されることはありません。
下線部の disagreeの後のところを見てみましょう。
historians disagree [<aboutX> or <onY>]
となっています。前置詞句2つが orで並列されています。Xにあたるものを探してみましょう。 how manyから the listまでです。この部分は
about [<how many ...> or <whether ...>]
となっています。つまり、疑問詞の節2つが orで並列されています。
パラグラフの後半の thoseの後に andによる並列があります。
those [<ofX> and <ofY>]
X、YにあたるものはX=china,Y=classical Greece and Rome.であり、Yはさらに classical [<Greece> and <Rome>]となっています。
範囲をもっと広くとり、センテンスの最初の Thoseからを見てみると、
X are on it, and so areY
となっています。この後半部は「Yもそうだ」という意味の倒置構文で
X are on it, andY are on it, too
と表すこともできるもの。構文上同種のものが並列される原則が、ここでも生きています。なお、このYは、前に分析した those of ...のこと。
【訳しかた】 下線部の how manyは代名詞用法。 how many=how many civilizationsということ。和訳するときに、代名詞は一般に、指されている名詞に置き換えて訳すほうが意味がはっきりするし、日本語らしくなる。 a particular candidateの candidateは「選挙の候補者」の意味のこともある。ここでは「候補」のこと。 particularは、ふつう「特に」と訳す particularlyの形容詞形で「特定の」という意味。 a particular〜で「ある特定の」の意味になる。類語に specificがあるが、 particularは「特に決まっている」、 specificは「ある条件に合っている」ということ。 as suchは「そういうものとして」という意味。特殊な事情や具体的なことは抜きにしてセオリーから言うときに使う。だから、 usually accepted as suchは「ふつうセオリーからいってそうと認められる」ということ。代名詞 suchは a list of civilizationsをではなく、 civilizationsを指している。
【全訳と解答例】
抽象概念としての文明はなかなか明確にしにくいが、歴史的事実としての文明なら、もっと話しやすい。文明というものがこれまでにいくつあったのかということや、ある特定の候補がリストに入れられるべきかどうかということや、あるいはその他の多くの疑問について、歴史家の意見にたとえ一致が見られないにしても、まじめな研究者のほぼ全員から、ふつうそれなりに受け入れられる文明のリストというものはある。疑問の余地のないものだけを数例あげれば、古代メソポタミヤやエジプトの文明はこのリストにあがるし、中国文明もギリシャ、ローマの文明も、それに入る。
【問題2】<アメリカ>下線部を日本語に訳せ。
It has become popular in Japan, Europe, and even the United States to claim that America is in decline, that its citizens are lazy, uneducated, unproductive, losing their creativity and their willingness to take risks.
When I look around me, it certainly seems true. Everything is falling apart. Crime is up. Standards of living are down. The homeless are increasing. Everything is made in Japan. But I think there's still hope. (静岡大学人文・教育学部)
【語句ノート】
□ claim that〜「〜と公言する、主張する」
□ in decline「衰退の道にある」
□ uneducated「教育を受けていない、教育のない」
□ unproductive「非生産的な」
□ creativity「創造性、独創性」
□ willingness「喜んですること、喜んでする気持ち」(形容詞 willingの名詞形)
□ take risks「危険を冒す」(run risksとも言い、単数形でも言う)
□ crime「犯罪(全体)」(犯罪行為を言うときには Countable)
□ standards of living「生活水準」(standardはしばしば複数形で使う)
□ the homeless「ホームレス」(おもに米国で問題になっている、家なき人々の群れのことを言う。 the+形容詞で複数の人々を指す)
□ fall apart「ばらばらになる」
【構文の把握】
下線部に that節2つが並んでいます。どちらも不定詞 to claimの中の動詞 claimのO(目的語)になっています。両方の内容をくらべてみると、後の<that〜>が前の<that〜>の内容をより具体的に説明する関係になっています。 おもに名詞的語句に見られるこのような関係のことを「同格関係」という。
2つめの that節は次のように解析されます。
that its citizens areX、Y、Z、losing [A andB]
まず形容詞が3つ(X、Y、Z)並列され、分詞構文の ing形(losing〜)がそれらにさらにかぶさっていっています。分詞構文の句の中のA、Bにあたるものは their creativityと their willingness to take risksであります。この後者は「みずから進んで危険を冒す気持ち」という意味だが、 They are willing to take risks.という文からできた名詞化形と考えられる(3の【問題30】を参照).that節全体が1つめのthat節の内容を具体的に説明していることに注意しましょう。
it certainly seems true (判断)
↑
Everything is falling apart.〜 Everything is made in Japan. (根拠)
【訳しかた】 分詞構文は付帯状況(主たる状況に付随する状況)を表すもので、この文の場合は「市民たちは怠け者で教育も受けてなく、無気力で独創性を失いつつあり、進んで危険を冒す気持ちもなくなってきている」というように、単純に並べればよい。losingは、その前に andがないので、進行形というよりは分詞構文であるが、訳すと似たようなものになってしまう。進行形も分詞なので、意味は結局同じことを言っているのだ。 uneducatedは「教育のない」というより「教育を受けていない」の方。前者は人に対する評価の意味を含むが、後者にはその色合いはなく、中立的な意味である。 unproductiveは「非生産的な」という意味のことが多いが、この日本語はことがらについて言うのがふつうなので、ここでの訳語としては採用しないほうがいい。losing their creativityは theirが「彼らの」という意味なので、もともとは creativeだったのに、という意味が含まれる。ただそこまで訳に反映する必要はないが。
【全訳と解答例】
日本でもヨーロッパでも、また当の合衆国でさえも、アメリカは落ちぶれてきている、国民は怠惰で、教育を受けておらず、無気力で創造力をなくしかけているし、みずから進んで危険を冒す気持ちを失いつつある、と公言するのが流行になっている。まわりを見回してみると、確かにそのとおりだと思える。なにもかもがばらばらになってきている。犯罪は増えている。生活水準は落ちている。ホームレスは多くなっている。物はみな日本製だ。けれどもまだ望みはあると私は思う。
【問題3】<芸術>下線部を日本語に訳せ。
No people known to us, however hard their lives may be, spend all their time and energies in getting food and shelter. (1) Nor do those who live under more favorable conditions and are therefore allowed a freer use of time spend all their leisure hours idly. Even the poorest tribes have produced work that gives them artistic pleasure, and (2) those whom various inventions have granted freedom from care, devote much of their energy to creating works of beauty. In one way or another artistic pleasure is felt by all members of mankind. (津田塾大学国際学部)
【語句ノート】
□ people「民族」
□ spend time in〜ing「〜することに時間を費やす」(spend time〜ingは「〜して時間を過ごす」
□ shelter「住」(food, clothing, and shelterで「衣食住」)
□ favorable「好都合な」
□ idly「怠惰に」(形容詞は idle)
□ tribe「種族」(生物学的に同じ部類に入る人たちの集団のこと)
□ grant = give
□ freedom from care「心配事のないこと」(be free from careの名詞化形)
□ devote ... to〜ing「...を〜することにあてる」
□ in one way or another「なんとかして、なんらかの形で」
□ member「一員」
【構文の把握】 下線部(1)は norによる倒置構文で Nor doSVという形。意味は「SもまたVしない」ということで、前文からつながっています。 doは倒置のための助動詞、Sは<those ... time>,Vは spend. noや norなどの否定語で始まる否定文は、早くV(述語動詞)を見つけて、その否定を頭に入れておくと意味がつかみやすい。ここの第1文も第2文も、述語動詞は spendだから、結局 don't spendと言っているのと同じ。
関係詞節<who〜>内に、動詞部分を並列した構文があります。
those who [V1 and thereforeV2]
という形をつかみます。V1は <live〜 conditions>,V2は <are (therefore) allowed a freer use of time>. thereforeはふつうには and thereforeの形にしてSVの前に置くのだが、V+Vという構造になっていて、しかも節内にあるという通常でない形式のために、割り込むことになったもの。
下線部(2)には並列構文はありません。 those whomからカンマまでは関係詞構造で、次のようにしてできたと考えられます。
<Various inventions> <have granted> <those> <freedom from care>
SVOO
→ those (関係詞) various inventions have granted freedom from care
先行詞となって節の先頭に跳び出した thoseはもともとSVOOのOだったもの。従って目的格であり、関係詞も自動的に目的格の whomになります。 【訳しかた】 全体的に難しいが、何を言っているのかつかむには最後を見ます。このパラグラフでは、まとめの文がそこにあるからです。段落のまとめの文は、段落の最初に置かれていることも多いのですが、。ただし、そういうものがない段落もあります。
下線部(1)では Nor ...の倒置構文の意味をまず枠組みとして把握しておかなければなりません。そうしてから<those who ...>の主語の部分をつかみます。 more favorable conditionsは however hard their lives may beのところと比べられています。これは「どれほど生活が過酷でも」ということだから「最も過酷」という最上級の意味にあたり、 <more favorable〜>はそれよりもよい条件ということになります。 <are allowed a freeer use of ...>は受け身。誰から allowされているのかは神からでしょう。
下線部(2)は、【構文の把握】に示したような文をイメージしながら訳します。ただし、主語が various inventionsという<人>でないものになっているので、日本語らしくするには少しくふうします。「〜のために」など、副詞的に訳すと自然になります。 (in) one way or anotherは「どうにかして」。 orを andにすると「あれこれ」の意味になります。
【全訳と解答例】
どんなに生活が過酷でも、自分たちの時間とエネルギーのすべてを食と住の獲得に費やす民族は、私たちの知っているかぎり、いない。 (1)また、もっと生活環境に恵まれているために、時間をもっと自由に使える種族にしても、ひまな時間のすべてをむだに過ごしはしない。極貧の種族でさえ芸術的な喜びをもたらす作品を生み出しているし、 (2)また、いろいろな発明品のために心配事のなくなっている人々も、美しい作品を創造することに多くのエネルギーを割いている。芸術の喜びは、人類の誰もが、なんらかのしかたで味わっている。
【問題4】<学習>下線部を日本語に訳しなさい。
The process of learning has gone on since man first existed and his ideas about it have been expressed in proverbial form. "You can take a horse to the water but you can't make him drink" is a proverbial way of saying that you must have a motive for learning. "If at first you don't succeed, try, try, try again" is a recognition that some quality of persistence is needed. "Practice makes perfect" speaks for itself, and "You must learn to walk before you can run" recognizes that there are stages in learning which must be taken in the right orderif success is to be achieved. (津田塾大学−英文)
【語句ノート】
□ process「過程、手順」
□ go on「続く、続ける」
□ exisit「存在する」
□ proverbial「ことわざの」(proverbの形容詞形)
□ way of〜ing「〜するしかた」
□ motive「動機」
□ at first「最初(に)は」
□ recognition「認識」
□ some quality of〜「ある種の〜」
□ persistence「しつこさ」(形容詞は persistent)
□ Practice makes perfect.「習うより慣れろ」
□ speak for itself「自明だ」
□ recognize that〜「〜と認める」
□ stage「段階」
□ order「順序」
□ be to〜「〜するべきだ、〜したいと思う、〜する予定だ」
□ achieve「達成する」
【構文の把握】
下線部の文は
X recognizes that〜
という形になっています。Xは "You must learn to〜"ということわざだから無生物主語の文。動詞 recognizeはふつう、主語として人を表す語句を取るので、少し変わっています。しかし、ことわざの説明となっている文が3つ並列されていて、それぞれのVが<is a proverbial way of saying that〜>から始まって
⇒ <is a recognition that〜>
⇒ <speaks for itself>
⇒ <recognizes that〜>
と次第に言いかえられて流れてきているところをとらえれば、speaksのところで擬人法的な方向に話者の気持ちが変わったとわかり、この文脈ならいかにも自然なことと納得することができます。
that節の中は<there areA in learning>となっています。つまり「学問にはAがある」ということですが、このAが少し複雑です。先行詞 stagesと関係詞節<which must be〜 if ...>が in learningによって分断されています。つけてみましょう。stages <which must be〜 if ...>となります。if節は関係詞節の中におさまっています。「...ならAがある」ということではありません。
【訳しかた】 I recognized him.は、その人を見て知り合いなら知り合いとひらめいてわかることを言うものだが、本文の recognize that〜は、 that節で表されていることがらについて、ほんとうのことだし、たしかなことだというように、事実として受けとめるという意味になる。これは「悟り」という日本語にも通じる。 関係詞 whichはいわゆる限定(制限)用法のもので、前にカンマがない。しかし、訳としては「学習には段階というものがあり、そしてその段階は...」のようにした方が自然でわかりやすい。 文章の第1文は訳すのがむずかしい。最初のところは『新英和活用大辞典』(研究社)に出てくる用例 The process of disrobing went on.(着物を次々と脱いでいった)を参考にして、人を主語とした文として捉え返すと訳しやすくなる。つまり、「人はずっと学習することを続けてきた」と捉える。後半も、受動態になっているのを能動態にかえて訳す。一般に受動態より能動態の方が意味がつかみやすい。
【全訳と解答例】
人は人類誕生以来ずっと学習し続けてきており、学習についての考えかたをことわざの形で表現してきた。「馬を水際に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」は、学習には動機が必要だということをことわざの形式で言ったものだ。「最初うまくいかなかったら、何度も何度もやってみよ」は、ある種のしつこさというものが必要だという認識を言い表したものである。「習うより慣れよ」は自明で、「歩くことをおぼえてはじめて走ることができる」は、学習には段階というものがあり、成功に至りたいならばそれを正しい順序で踏むべきだという悟りである。
【問題5】<人間>下線部を日本語に訳しなさい。
There is a deep-rooted prejudice among human beings against human beings. Man is the butt of nine-tenths of their satire and you would conclude, if you believed half what they have written about him, that he must be the most unpleasant and the most blackguardly of the animals. In recent years, it has been the custom to accuse him of a love of cruelty of which all the animals are innocent. (聖心女子大学)
【出典】Robert Lynd(1879-1949), "Fair Play for Man"
【語句ノート】
□ deep-rooted「根深い、深く根ざした」
□ prejudice「偏見」
□ human beings「人間」
□ man「人類、人間」(無冠詞)
□ butt「的」
□ nine tenths of〜「〜の10分の9」
□ satire「風刺、皮肉」
□ conclude that〜「〜と結論を下す」
□ half what〜「〜であることの半分」
□ unpleasant「不愉快な」
□ blackguardly「ならずものの」(blackguard「ならずもの」の形容詞形)
□ accuse〜 of ...「...であると言って〜を非難する、責める」
□ a love of〜「〜嗜好」
□ cruelty「残虐」(形容詞は cruel)
□ be innocent of〜「〜に欠けている」
【構文の把握】
最初の文は前問の there be構文と似ています。先行詞にあたる<a deep-rooted prejudice>と関係詞節にあたる<against human beings>が、本来後ろにあるべき<among human beings>により分断されています。下線部の文は<It is ... to〜>の形の仮主語の構文。前置詞つきの関係詞節<of which〜>は
All the animals are innocent of a love of cruelty.
「すべての動物には残虐嗜好が欠けている」
の文がもとになっています。 <of a love a cruelty>を<of which>に変えて文の先頭に出すと、この関係詞節ができます。
accuse him of a love of crueltyの accuseの用法に注意。
<accuse (人) of (罪状)>
の形で使います。この「罪状」−大げさか?しかし、告訴するという意味も ac cuseにはある−は、名詞または動名詞で表されます。たとえば
She accused him of envy.
「彼女は彼をねたみ深いと言って責めた」
では、envyという名詞が来ています。形容詞 enviousを使うなら
She accused him of being envious.
のように動名詞にしなければなりません。
第2文は andで切って、2文とみなすとわかりやすくなります。 andの後は
<you would conclude, if you ..., that〜>
となっていますが、これは仮定法過去の if節が動詞 concludeと、そのOのthat節とのあいだに挿入されたもの。VOの連続が分断されることはあまりないことですが、ここでは that節が長いためにそうされています。指示代名詞が theyと heの2つになっているのは、 theyが複数形の human beingsを指しているのに対して、heは単数扱いの man「人類」を指しているからです。
【訳しかた】 in recent yearsは「近年」、 the customは「ならわし」がよいだろう。 accuse him of a love of crueltyは、【構文の把握】で見たとおりの訳しかたをする。 ofの後が envyなら being enviousととって「ねたみ深いと言って」のように訳す。これにならって、a love of crueltyは having a love of cruelty「残虐嗜好を持っている」ととる。 関係詞のところは、前問同様、いったん切ってしまい、あらためて展開する訳し方をするとよい。
【全訳と解答例】
人間のあいだには、根深い、反人間的な偏見がある。人間の10の風刺のうち9までが人類を標的にしている。人間が人類について書いたもののうち半分でも信じるなら、動物の中で人類が最も不愉快で最も荒くれ者であるという結論になるだろう。近年人類を残虐嗜好であると非難するのがならわしになっているが、他のすべての動物にはそのようなところが見られない。
2.文章の流れをつかむ
───────────────────────────
接続詞│関係詞│分詞構文
同格│並列│倒置│対比
【問題6】<人が変わること>下線部を和訳しなさい。
Some people are so changed by their life's experience that in old age they behave in completely unexpected ways. Many of us know elderly men and women who no longer act as we have come to expect them to act. I am not talking here about victims of senile dementia. In the example I am thinking of the person continues to behave in what most people would agree is a normal manner, but one so remote from his old self that he appears to those who know him, to be someone else entirely. *senile dementia老人性痴呆 (東京大学)
【語句ノート】
□ so〜 that ...「。。.なほどにまで〜、たいへん〜なので。。.」
□ completely「まったく」
□ unexpected「予想されない、思いがけない、意外な」
□ elderly「お年寄りの、年配の」(=old)
□ no longer〜「もはや〜ない」
□ come to〜「〜するようになる」
□ victim「(難病などの)患者、犠牲者」
□ senile「老人の、もうろくした」
□ dementia「痴呆」(精神医学用語)
□ continue to〜「〜し続ける」
□ normal「正常な」(反対は abnormal)
□ manner「態度、やり方」
□ remote from〜「〜から遠く離れた」
□ self「自己」
□ those who〜「〜である人たち」
□ entirely「すっかり、まったく」
【構文の把握】
下線部を分析すると
<In the example〜>SV <in〜 manner, but ...>
副詞的語句 副詞的語句
というSVの文。最初の副詞的語句<in the example I am thinking of>は、例を示すための範囲設定の役目をしています。 thinking of the personのように ofが後の名詞に続くようにも見えますが、そう取るとわけがわからなくなります。 in the example (which) I am thinking ofととらえなければなりません。日本人は「〜である〜においては」というような日本語の流れに慣れきっているので、それとはまったく逆の流れにだまされることがあります。英文を読むときには、関係詞や過去分詞や現在分詞など、名詞の後に来る形容詞用法のものがあるということを常に忘れないようにしなければなりません。後の方の副詞的語句は、動詞 behave「ふるまう」にかかって、そのふるまいかたを表すもの。 butの後の oneはイコール a normal mannerですが、その oneに<so remote from〜>の形容詞句をかけて、さらに別のことを言う、という構文になっています。構文的には butからピリオドまでのすべてが副詞的語句の範囲内。意味的には butのところに大きな区切りが認められます。what most people would agree is a normal mannerは、結局は a normal manner「ふつうのしかた」ということなのだが、関係詞 whatを使ってもっと凝った言いかたにしています。関係詞構文については、それのもとになった文をイメージすることが大切ですが、この場合は
Most people would agree (that) it is a normal manner.
「たいていの人々が、それがふつうのしかただと同意するだろう」
という文をもとの文として想定することができます。 itが whatに変わって文頭に出ると、本文の関係詞構造になります。
he appears to those who know him, to be someone〜のところは <S appears to (人) to〜>の形。誰にそう見えるのかを言うには、 <to (人)>を不定詞の to〜よりも前に言います。
【訳しかた】
continue to〜は意味をとって「正常からはずれない」と訳す。全体の訳がうまくいかないときには、解答例に示したように日本語をくふうする。
第1文、第2文は Someや Manyで始まっている。このような主語で始まる文は、「。。.の人もいる」のように、 There are some(many)〜の文であるかのように訳す。
【全訳と解答例】 人生の経験によって変えられて、年取ったときに、それまでにはまったく予想されなかったふるまいかたをする人たちがいる。こうするだろうとこちらが思うようになっているのに、そのとおりにはしないお年寄りたちを、知り合いに持っている人も多い。私が言っているのは老人性痴呆の患者のことではない。たいていの人たちによってふつうと認められるふるまいかたからはずれることがないのに、昔のその人のふるまいかたからするとあまりにかけはなれているので、知り合いからすっかり別人のように見られてしまう人のことを、私は今例として思い浮かべている。
【問題7】<言語に見られる性>下線の部分を日本語に訳しなさい。
Even when the sexism is not built into the grammar and usage, as it is in French and English, the speech community often regards masculine values as the norm. Words like master and father have traditionally been those of leadership and power− as in master of my fate and the father of modern science− while feminine words are used to imply unpredictability or treachery, which is one reason why the U.S. Weather Bureau has given feminine names to hurricanes.
(青山学院大学文学部−英文・仏文・史)
【語句ノート】
□ even when〜「たとえ〜でも」(=even if〜)
□ sexism「(文法上認められる)性の区別」
□ be built into〜「〜に組み込まれている、〜に作り付けになっている」
□ usage「語法、 (語句の)慣用法」
□ speech「話すこと、話すことば」
□ community「共同社会、共同体」
□ regard〜 as ...「〜を。。.とみなす」
□ masculine「男性の、男の」
□ value「意味」
□ norm「標準、規範、ものさし」
□ traditionally「伝統的に」
□ leadership「リーダーシップ、指導力」
□ power「権力」
□ master of〜「〜を制する者、〜の支配者」
□ fate「運命」
□ feminine「女性の、女の」
□ imply「〜の意味を含む」
□ unpredictability「予測できないこと」(unpredictableの名詞形)
□ treachery「裏切り」
□ the U.S. Weather Bureau「合衆国気象局」
□ hurricane「ハリケーン」(カリブ海、メキシコ湾方面に発生する大暴風)
【構文の把握】
下線部の構文を大まかにつかむと
<Even whenX is not〜>, <as it is〜>, <S regardsO asY>
となっています。最初が「条件」を言う節、最後が主節、まんなかが条件節のの補足をする挿入節。
<as it is〜>の挿入節は as it is (built into the grammar and usage) in French and Englishということ。 asは「〜であるように」という意味のものだが、この文は asの前の節が否定文になっています。訳しかたに注意が必要。
【訳しかた】
<as it is in French and English>の asは、前が肯定文なら「〜であるように」としてうまくいくが、このときのように否定文のときにはかえって、「〜とは違って」のように訳した方がよい。そうしないとうまくいかない。 <(否定文), as ...>という構文は比較的よく目にするので、覚えておこう。
as it isの itが指しているのは the sexism. sexismとは、ふつうには社会における性による差別主義のことを言うが、ここでは、言語に文法的に性の区別を認めることやそういった立場のことを言っている。また、 the sexismは、そのことに関係ある文法上のしくみのことを指している。フランス語ではたとえば「石」は pierreといい、女性で定冠詞も女性形の laをつける。1つ1つの名詞がこのように性を持っている。英語には、このようなことはないが、たとえば shipはふつう sheで指すというように語を性的に見ることがある。このことを the sexismと言っている。 speech communityは<speech+community>の形。これは名詞2つを複合させた複合名詞という形。前の名詞 speechはこのとき、後の名詞 communityの成り立つ基盤を表すはたらきをしている。 communityは共通の利害に基づいて成り立つ集団・社会のことで、その基盤のちがいによって、さまざまに色づけられる。the Jewish community in New York(ニューヨークのユダヤ人社会)なら基盤は人種によるのだし、 a one-industry community(単一産業都市)なら1つの産業に地域全体がよりかかっていることになる。話されることばを基盤とする communityなら、 speech communityという。なお、英語を話すcommunity,日本語を話すcommunityのように speech communityもいろいろ。それらをまとめて the〜といっている。theは「総称」の the. masculine valueも内容をとらえにくい用語。ただ、後の方にある feminine wordsと対になっていることを見逃さなければ、正しく訳せるだろう。
【全訳と解答例】
フランス語と英語では文法や語法に性の区別が組み込まれているが、たとえそうでなくとも、言語共同体というものはよく、男性の意味を基準とみなすものだ。masterや fatherのような語は、master of my fate(我が運命を制する者)や the father of modern science(近代科学の祖)に見られるように、もともとリーダーシップや権力を表すことばだったし、今もそうであるが、他方、女性の語は、予測不能とか裏切りとかを意味するように使用されており、合衆国気象局がハリケーンに女性の名前をつけた一つの理由もここにある。
↑TOP
【問題8】<大陸の移動>下線部を日本語に訳せ。
Suggestions that the continents might have moved had been advanced for various reasons for centuries. The remarkable jigsaw puzzle fit of the Atlantic coasts of Africa and South America provoked the imagination of explorers almost as soon as the continental outlines appeared opposite each other on the world map. (東京都立大学工学部)
【語句ノート】
□ suggestion「考え、思いつき、示唆、提案」
□ might have moved「ひょっとしたら動いたかもしれない」(=may have moved)
□ be advanced「提案される」
□ remarkable「はっきりとめだった、めざましい」
□ jigsaw puzzle fit「ジグゾーパズル的にぴったりと合うこと」
□ the Atlantic「大西洋」
□ porovoke〜「(〜の感情などを)起こす」
□ explorer「探検家、探究家」(動詞は explore)
□ continental「大陸の」(continentの形容詞形)
□ outline「輪郭」
□ opposite each other「向かい合って」(←「互いの反対側に」。 oppositeは前置詞。each otherは代名詞)
【構文の把握】
下線部はSVの文。SとVは次のとおり展開されます。
S=<Suggestions> <that the continents might have moved>
V=<had been advanced> <for various reasons> <for centuries>
Vは過去完了形の受け身形で、それぞれ前置詞句の修飾を受けています。Sは
<suggestions> + <that〜>
head word同格節
と解析されます。この that節は I suggest that〜の that節と同じ名詞節だが、ここでは抽象的意味内容の名詞の意味内容を具体的に補足説明するはたらきをしており、同格節と呼ばれます。例を示そう。
・fact that〜「〜という事実」・information that〜「〜という情報」
・rumor that〜「〜という噂」 ・knowledge that〜「〜という知識」
・news that〜「〜というしらせ」
headとなる名詞は「思考」や「伝達」に関係していて、knowledge-know
のように対応する動詞のあるものが比較的多い。次の一群にも注意。
hope agreement conclusion decision promise danger
idea story belief thought assertion tradition
wish argument explanation opinion experience possibility claim expectation
名詞を説明する節としては、ほかに関係詞節があります。しかし、構造はかなり異なります。
1. His suggestion that we should give it up is out of place.
「そのことをやめるべきだという彼の提案は現実的でない」
2. The suggestion he offered us was out of place.
「彼が私たちに示した提案は現実的なものではなかった」
1の<headの名詞=that〜>という静かな関係に対して、2は He offered us the suggestion.のようなSVOOのダイナミックな関係が裏にあります。こういう点で異なります。
【訳しかた】 suggestionは「他の人に示す(示された)考え」がその原義。「考え」そのものよりも具体的な意味を持つので、よく複数形になり、その内容を示す同格節も後につくことがよくある。しかし、訳としては「考え」でよい。日本語の「考え」の意味が広いからだ。 might have <過去分詞>は仮定法から出た婉曲用法の言いかたで、「ひょっとしたら〜だったかもしれない」というようにきっぱり断言するのを避ける用法のもの。 may have〜「〜したかもしれない」とも言うが、 mightにするともっと断言調が弱まることになる。
【全訳と解答例】
もしかしたら大陸は移動したのかもしれないという考えが、さまざまな根拠に基づき、何世紀にもわたって提出されてきていた。世界地図上に大陸の輪郭が向かい合って示されると、アフリカと南米大陸のそれぞれの大西洋岸がジグゾーパズルのように驚くほどぴったりと合うので、探究家たちはたちまち想像力を刺激された。
【問題9】<戦場>下線部を日本語に訳せ。
Amid the whirlwind that engulfed us in dust and grit, I opened my eyes a crack and waved my hand high toward the soldiers on the truck. But they showed no reaction to my greeting and just cast a vague glance past me as though they were not yet awake. The soldiers still hadcamouflage of tree branches attatched to their helmets and shoulders, and their faces were all covered with a layer of yellow dust. Then one of them finally noticed me. His forehead was wrapped in bandages. He looked, then frowned, and suddenly his mouth began to twitch. Too late, I realized that this queer twisted expression was his struggle to respond to my greeting; the truck with the bitter smile was already lost in the dust and the next truck was passing in front of us. (和歌山大学経済学部)
【語句ノート】
□ amid〜「〜の真ん中に、〜のまっただ中で」
□ whirlwind「つむじ風」
□ engulf〜 in…「〜を…に巻き込む」(en+gulf→ engulf. enは enableの enに同じ)
□ dust and grit「砂つぶまじりの土煙」(dust「土煙」、grit「砂塵」)
□ a crack「ほんのちょっと」(crackは「割れ目、すきま」という意味の名詞だが、 open〜 a crackの形で目的格補語として使うことがある)
□ cast「投げる、投げかける」
□ vague「はっきりしない、ぼんやりした」
□ glance「一目、一瞥」
□ camouflage of tree branches「木の枝でできた戦闘用擬装」
□ attatch〜 to ...「〜を。。.にくっつける」
□ layer「層」
□ bandage「包帯」
□ frown「顔をしかめる、眉をひそめる」
□ twitch「けいれんする、ひきつる」
□ twist「ゆがめる」
【構文の把握】
his struggle to respond to my greetingに同格関係が見られます。最初の to以下が同格語句で、his struggleがhead word. つまり、
<抽象的意味内容の名詞> + <to〜>
という形になっています。同格の to〜と形容詞的用法のものとの区別はなかなかつけにくいが、たとえば something to eatなどの toは、 (これから先の)用途・目的を示すものと考えられます。同格のものにはそういう意味あいはありません。そうではなく、むしろ抽象を具体化するようにはたらきます。次の例を見てみましょう。名詞は意志や望みなどの心のはたらきに関係するものになっています。
・ability to〜「〜する能力」・decision to〜「〜しようという決意」・intention to〜「〜する意図」・wish to〜「〜したいという望み」
・reason to〜「〜する理由」
【訳しかた】
これらについては前問の thatを使う同格構文とは少々見方を変える必要がある。センテンスが名詞化したものという見方をした方が意味解釈に役だつことが多いからだ。my wish to〜なら、I wish to〜。 , his intention to〜なら He intends to〜。のように、裏に隠れているセンテンスを思い浮かべると意味がとりやすくなる。his struggle to respond to my greetingも同様に考える。これは実は
He struggled to respond to my greeting.
なのである。struggle to〜は「〜しようとしてもがく、苦闘する」の意味だから、heは少年の挨拶になんとかこたえようとしてもがいたのだ。 なお、最後に usとあるのは Iである少年と連れの少女のこと。また、トラックで輸送されてきた兵隊たちは、戦闘からひきあげてきたばかりのところという設定になっている。
【全訳と解答例】
風が巻き、ぼくたちは砂混じりの土煙の中に閉じ込められた。ほんのちょっぴり目を開けて、トラックの兵隊たちに向かってぼくは高々と上げた手を振った。だが、兵士たちはまるで反応を見せず、眠りから目覚めきれないでいるかのようなぼんやりしたまなざしを投げかけてくるだけだった。ヘルメットや肩にはまだ木の枝の擬装がついていた。どの顔も黄色い土ぼこりにまみれていた。そのうちに、ついにひとりがぼくに気づいた。額から後頭部へ包帯を巻いた男だった。ぼくのことを見ると、顔をしかめ、それから急に口元をひきつらせた。その奇妙に歪んだ表情がこちらからの挨拶になんとか応じようとしたしるしなのだと気づいたときには、トラックはすでに土煙の中に苦い微笑とともに消え去り、目の前を別のトラックが過ぎて行こうとしていた。
【問題10】<物体と空間>下線部を日本語に訳せ。
If there were a body, just one single ball, with no surrounding space, there would be no way of recognizing it as a ball or any other shape. If there were nothing ouside it, it would have no outside. It might be God, but certainly not a body! So too, if there were just space along with nothing in it, it wouldn't be space at all. For there is no space except space between things, inside things, or outside things. This is why space is the relationship between bodies.(島根大学)
【語句ノート】
□ body「物体」(solid bodies「固体」のように使う)
□ surrounding「周囲の」
□ space「空間」
□ there is no way of〜ing「〜する方法はない」
□ recognize〜 as ...「〜を。。.と認識する」
□ shape「形」
□ So too, ...「同様にまた、 ...」(soは also「同様に」の意味)
□ along with〜「〜といっしょに」(alongは withの意味を強める副詞)
□ .... For〜。「。。.である。というのも〜だから」(forは接続詞。文頭に使われるのはまれ)
□ This is why ...「こういうわけで。。.」
□ relationship「関連、むすびつき」
【構文の把握】 下線部の if節の中では、 a bodyと just one single ballとが同格関係で並んでいます。 <with〜>は付帯状況を表す前置詞句。
下線部の主節には no way of recognizing〜という同格用法の動名詞があります。これは
<抽象的な名詞>+<of>+<〜ing>
の形としてとらえることができます。that節、不定詞、動名詞の3つの同格語句のうち、動名詞のみが名詞とのあいだに ofを要求します。次に例をあげます。
・fear of〜ing「〜する恐れ」
・intention of〜ing「〜する意図」
・fact of having <過去分詞> 「〜した事実」
・possibility of someone's〜ing「だれかが〜する可能性」
・chance of〜ing「〜する見込み(機会)」(「見込み」の意味ではよく複数形になる)
同格の語句2つを結ぶ前置詞 ofは〜ing形のほか、疑問詞の節や<疑問詞 >+<to〜>をとることもあり、名詞をとることもあります。
【訳しかた】 実はこの文章はもっと長い文章の結論部分だけを抜き出したもの。元の文章全体を読めば、もっとわかりやすいと感じるだろう。文章全体の主旨は、ひとは空間というものを無視しがちだが、世界は物体と空間との共振関係(a vibration)の上に成り立っている、空間も重要なのだ、ということだった。 文章のほぼ全体が仮定法に支配されていることをまずつかみたい。 If there were〜の wereも仮定法。このことは with no surrounding spaceという現実離れした内容の語句が続いていることからわかる。
with no surrounding spaceは付帯状況として前の語句に並んでいる。 noは「ない」ということだから、このときの ifにより示される条件とは、物体があることと、まわりに空間がないことの2つになる。 名詞 wayには way to〜、 way of〜ing, way that〜のように不定詞、動名詞、節のいずれもが続く。それぞれ使い方と意味が微妙に異なる。 there would be no way to recognize〜となっていたとしたら、 recognizeする方法はまったく見つからない、というような意味で、道が閉ざされていることがほのめかされる。 of〜ingのときには、それほど強い意味でなく、単に方法がないと言っていることになる。ただし、訳にこの意味の差が出ていなくとも減点の対象になることはない。
If there were nothing ouside itから続く部分は、外側に何もないようなものはふつうには存在しないことを言っている。
【全訳と解答例】
仮にある1つの物体が、たとえばただ1つのボールがあって、まわりに空間がなかったとしたら、その物体をボールや、またはなにか他の形態として認識する方法はないだろう。その物体の外側になにもないのであれば、その物体には外側というものがないことになろう。そのようなものが神である可能性はなきにしもあらずだが、しかし、1個の物体であるとは絶対に言えない。同様にまた、中になにもない空間がそれのみあったとしても、それは空間でもなんでもないと言えよう。空間は物体のあいだにあるか、物体の内側または外側にあるかであり、それ以外に空間というものはないからである。こういうわけで、空間とは諸物体間の関係であるということになる。
【問題11】<アメリカ史>下線部を日本語に訳せ。
Between two great wars−the Civil War and the First World War− the United States of America came of age. In a period of less than fifty years, it was transformed from a rural republic to an urban state. The frontier had vanished. Great factories and steel mills, transcontinental railroad lines, flourishing cities marked the land. And with them came accompanying evils. (関西学院大学社会学部)
【語句ノート】
□ the Civil War「南北戦争」(1861-1865,アメリカの北軍と南軍の戦い)
□ the First World War「第1次世界大戦」(1914-1918, World War Iともいう)
□ come of age「成年に達する、成熟する」
□ period「期間」
□ less than〜「〜以下(の)」
□ transform「完全に変えさせる」(他動詞。見かけも内実もすっかり変えてしまう、という意味)
□ rural「農村の」(反対は urban)
□ republic「共和国」(monarchy「君主国」に対して peopleに主権がある国)
□ state「国家」(country「(ふつうの意味で)国」に対して政治的統一体という意味合いを含む)
□ frontier「辺境」
□ vanish「消える」(=disappear)
□ steel mill「製鉄工場」
□ transcontinental「大陸横断の」(← trans+continent+al)
□ flourishing「繁栄する」
□ mark「〜に跡を残す」
□ accompanying「随伴する、伴って起こる」
□ evil「邪悪、邪悪な」(evils「邪悪なこと」)
【構文の把握】
下線部をふつうの語順でいうと
And accompanying evils came with them.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~~ ~~~~~~~~~
S V 副詞句
となります。これの副詞句が前に出てSVが倒置されると本文の形式になります。副詞句の前置がひきがねになってこのような倒置が起こります。この倒置のルールをまとめると
副詞句前置 ⇒SV逆転
となります。 どのような文でもこのような倒置が可能かというと、そうではありません。副詞句が前置されても倒置の起こらないことも多い。この倒置構文を取る動詞は
・「存在」を表す be, lie, standなど
・「往来」を表す go, come, rushなど
であります。従って副詞句はたいてい「場所」や「方向」を表すものになります。 なぜ下線部において副詞句が前置されたのかは文章の流れによります。書き方がそもそも時の流れを感じさせるようなものとなっており、その流れに沿っていくなら、この順序が最適です。後に続くべき accompanying evilsがどのようなものなのか、読む者は大いに気を持たさせられます。文頭よりも文末の方が、はるかに語句は重々しく強調されます。
【訳しかた】 evilは抽象名詞としては「邪悪」という意味。これが複数形になると、普通名詞化して、具体的なさまざまな邪悪なものごとのことを言うように変化する。これを抽象名詞の普通名詞化という。1つの名詞の中で、抽象的な意味が薄れ、具体的な意味が濃くなると、その名詞は aを伴ったり、複数形になったりするようになる。だから、抽象名詞、普通名詞といっても、固定的なものではなく流動的なもの。 accompanyingは動詞 accompanyの現在分詞形。 accompanyは、
・A accompaniesB「AがBについていく」
・B is accompanied byA「BがAに伴われる」
というように使う。ここでは accompanying evilsの語句の背後に、 evils that accoamanies them「それらに伴って起こる邪悪なことども」という関係詞構造があることを見破ろう。 <現在分詞+名詞>は、後の名詞を主語にしたSV関係を裏に持っている。従って受動的な意味では決してなく、能動的な意味である。
【全訳と解答例】 南北戦争と第一次世界大戦の2つの大戦間にアメリカ合衆国は成年に達した。50年に満たない歳月のうちにアメリカは、農村的な共和国から都会的な国家へと一大変身を遂げた。フロンティアはすでに消滅していた。大工場、製鉄工場、大陸横断鉄道、繁華な都市群が国土をしるしづけた。そしてそれらといっしょに、つきものの邪悪なことどもがやって来た。
【問題12】<ことばと概念>下線部を日本語に訳せ。
The external environment has obvious effects on language. Less
obvious but often more important are the aspects of a culture's
internal environment that are revealed through the window of language.
Although it is rarely visible to us, we each carry around in our heads a
conceptual map of the world, a guidebook to rightness and wrongness,
ugliness and beauty, value and worthlessness. (新潟大学)
【語句ノート】
□ external「外部の」(反対は internal)
□ environment「環境」
□ have an effect on〜「〜に影響をおよぼす」
□ obvious「明白な」
□ aspect「様相、面」
□ culture「文化(圏)」
□ reveal「明らかにする、見せる」
□ the window of language「言語という窓」(ofは「所属」ではなく「同格」を表す)
□ rarely「めったに〜ない」(否定の意味を含む)
□ visible「見える」(eat⇒edible, see⇒visible)
□ carry around「持ち運ぶ」(=carry about)
□ conceptual「概念的な」
□ ugliness「醜」(uglyの名詞形)
□ worthlessness「無価値」(← worth+less+ness)
【構文の把握】 ここの倒置構文も文章の流れと関係があり、その流れは前問のものと似ています。
前問では、ことのなりゆきの順に沿って語順が転倒しました。ここでは「なりゆきの順」のかわりに「比較の順」が倒置を引き起こしています。どのようになっているのか見てみましょう。
┌─────────┐
│Aはあきらかです。│ (A=外部環境が言語に影響すること)
└─────────┘
↓
┌──────────────────┐
│あきらかではないがもっと重要なのは│ (比較)
└──────────────────┘
↓
┌───┐
│Bだ│ (B=文化内部の環境)
└───┘
倒置により、「Bだ」の部分が強調されるようになっています。前置された(比較級・最上級)形容詞が、倒置のひきがねの役目をしています。倒置されないふつうの語順の文を一応次に示しておきます。
The
aspects of a culture's internal environment that are revealed through
the window of language are less obvious but often more important.
これを本文にあてはめてみれば、倒置されている方がずっとよいことがわかります。
【訳しかた】 まず
the external environmentと a culture's internal
environmentの意味を解釈しなければならない。まず前者については theに注目し、天体など世界の唯一物につける
theと似たようなものととらえる。人間にとっての唯一の外部環境とは、ふつうのいわゆる環境のことであり、通常単に the
environmentと言うのだが、言語にとっての環境には「それぞれの文化の内部の環境」もあると筆者は考えるので、対照のために形容詞をつけたのだ。
この文化内部の環境については、
revealed through the window of languageとか rarely visible to usとか a
conceptual map of the worldとか a guidebook
to〜とかの、続けざまの言い換えによる説明がある。そこから意味をつかむようにする。
a
culture「文化集団」とは、文化によって世界を集団に分けたとして、その集団のうちのひとつのことを言う。「文化圏」や「国」と訳しても訳しすぎではない。
aspectsも複数形になっている点に注意する。 variousや manyは前にないけれども、意味を具体化させる必要がある。
なお、 itは a conceptual map以下を指している。
【全訳と解答例】
外部の自然環境はあきらかに言語に影響を及ぼす。それほど明らかではないが、しばしばもっと重要なのは、それぞれの文化圏の内部的な環境のさまざまな面であり、これは言語という窓を通して見ることができる。人は皆、概念的な世界の地図を、正邪、美醜、価値無価値の別を教えてくれるガイドブックを、めったに目には見えないけれども、頭の中に持ち運んでいる。
↑TOP
【問題13】<森の生活>下線部を日本語に訳せ。
Sometimes,
in a summer morning, having taken my accustomed bath, I sat in my sunny
doorway from sunrise till noon, rapt in a reverie, amidst the pines and
hickories and sumachs, in undisturbed solitude and stillness, while the
birds sang around or flitted noiseless throughthe house, until by
the sun falling in at my west window, or the noise of some traveller's
waggon on the distant highway, I was reminded of the lapse of time. (玉川大学文学部英米文学科)
【出典】Henry David Thoreau(1817-1862), "Walden, or Life in the Woods"(ソローは文明社会に背を向け、自分で森の中に丸太小屋を作り、個人主義の哲学を実践したアメリカ人)
【語句ノート】
□ in a summer morning「夏の日の午前中に」
□ accustomed「いつもの、例の」
□ doorway「戸口、玄関口」
□ rapt in a reverie「瞑想にふけって」
□ amidst〜「〜に囲まれて」
□ pine「松」
□ hickory「ヒッコリー」
□ sumach「ハゼノキ」
□ undisturbed「邪魔の入らない、平静な」(←un+disturb+ed)
□ solitude「ひとりでいること、孤独」
□ stillness「静けさ」
□ flit「すいすい飛ぶ」
□ noiseless「騒音のない」
□ fall in「沈む」
□ waggon「荷馬車」(wagonの方がふつう)
□ distnat「遠く離れた」
□ highway「本街道」
□ be reminded of〜「〜を思い出す、〜に気づく」
□ lapse「経過」
【構文の把握】 問われているのはカンマでつぎつぎにつながれた、まさに長文といえるワンセンテンスの中の untilで始まる節の内容。その部分だけ文の形にして抜き出してみましょう。
By the sun falling in at my west window, or the noise of some
traveller's waggon on the distant highway, I was reminded of the
lapse of time.
これは
I was reminded of〜 <byA orB>.
という形の文の中の<byA
orB>(AやBによって)の句が前置されただけのものにすぎません。つまり、副詞句が本来あるべき位置から取り出されて文頭に挿入されたもの。広い意味では、この種の語句の移動も「倒置」といえなくもありません。【問題11】の副詞句前置の倒置構文とは異なるので、もう一度前を見直して、そこではどういう条件が必要だったのかを再確認しておきましょう。SVの倒置を伴わない、このような構文を、前置構文と呼ぶことにします。副詞句のほかにOも、SVの逆転なしに単に前置されることがあります。the
sun falling in at my west windowは動名詞。 the sunが意味上の主語で、 falling
inがその述語動詞にあたります。動名詞があったら、それのもととなった文をいつもイメージするようにした方がいいでしょう。
【訳しかた】 I
was reminded of〜 by ...は、能動態にすると<... reminded me
of〜>という無生物主語の文となる。意味は「私は。。.により〜に気づかされた」となる。 <...>にあたる1つ目の語句が
the sun falling in at my west windowで、これを文にすると
The sun is falling in at my west window.
となる。動名詞になると、文のときにははっきりしていた時制があいまいになる。どのような時制なのかは文脈から判断することになる。ここでは「太陽が沈んでいく」と解するのが適切であろう。
at my west windowは「西の窓に」という意味。 at the windowは sit at the
window「窓際(窓辺)に座る」、 lean out at the
window「身を乗り出して窓から顔を出す」など、「窓に面して、窓を通して」に近い意味を表す。太陽の沈むのが窓にうつるのを
atで表していると考えられる。
【全訳と解答例】
ときには、夏の日の午前に、いつもの入浴のあと、日のよくあたる戸口に日の出から正午まで居座り瞑想した。まわりは松やヒッコリーやハゼノキの林で、鳥があちこちでさえずり、また、音もなく小屋の中を飛び抜けていく。邪魔する者はだれもなく、静かにひとりきりでいると、小屋の西の窓に日の沈んでいくのを見たり、遠くの街道に旅人の馬車の過ぎる音を聞いたりして、ああ時がたったのだと気づくのだった。
【問題14】<シベリア鉄道>下線部を日本語に訳せ。
The
construction of the Trans-Siberian Railway, in the dozen years between
1891 and 1903, was one of the great railroad-building victories over
nature. Never before had railroad tracks been laid so far north, and
the earth on which these tracks were laid was frozen so solid as to be
like rock. (小樽商科大学)
【語句ノート】
□ construction「建設」(動詞は construct)
□ Trans-Siberian「シベリア横断の」(trans+Siberian)
□ dozen「10あまりの」(正確に12個のことを言わないこともある)
□ victory over〜「〜に対する勝利」
□ railroad tracks「鉄道線路」
□ frozen「凍る、凍りつく」(freeze-froze-frozen)
□ solid「堅い」
□ so〜 as to ...「。。.であるほど〜」
【構文の把握】 never
beforeという否定の意味を含む副詞句が前置されたためにSと助動詞の倒置が起こったもの。railroad tracksがS、
hadが過去完了形を作る助動詞。had been laidの
beenも、受け身形を作る助動詞だが、助動詞がいくつか並んでいるときには、最初の助動詞だけが主語と倒置されます。この倒置は、文章の流れよりも、むしろ意味の強調と関係があります。もちろん否定の意味が強調されています。口語ならば強く発音すしさえすれば倒置を起こさないで済むが、文章ではその手がきかないので、このような倒置がよくあります。 次に、特殊な副詞句の前置による倒置構文の、よくあるパターンを示します。
・ Not only wasS〜、 but also ...
「Sは〜だったばかりでなく、。。.でもあった」
・ Hardly hadS〜 when ... 「Sが〜するとすぐに。。.」
・ Little didS〜「Sはまったく〜でなかった」
・ Well doS〜「Sはたいへんよく〜」
be動詞はそのまま倒置されるが、ふつうの動詞は助動詞がないときには do(does, did)の手助けを受けることになります。助動詞があれば、その助動詞が倒置されます。 なお、下線部を倒置しない形で示せば
Railroad tracks had never been laid so far north before ...
となります。
andの後は<前置詞+関係詞>構造と<so〜 as to ...>,それに文型がポイントとなります。
<the earth on which these tracks were laid> <was frozen> S V
<so solid as to be like rock>. C
Cの中の<so〜
as to ...>は「程度」を表します。どの程度〜なのかが、 <...>の部分で言われます。 soと
asのくっついた<so as to〜>も「目的」のほかに「程度」を表すこともあるが、それとは混同しないようにしましょう。
【訳しかた】 <,and>が何と何をつないでいるのかに注意する。あるいは、
andの後の部分も倒置構文なのかどうかに注意する。場合によってはそうであることもあるからだ。 しかし、ここでは倒置構文は<,and>のところで終わっている。
Never beforeを後半部につけてみれば確かめることができる。
(×)Never before the earth on which these tracks were laid was frozen so solid as to be like rock.
こうしてみても倒置のための助動詞がない。仮に
hadが省略されているとしても、 hadと wereではつながりようがない。 <so solid as to be like
rock>の<be like rock>は「岩のようである、岩みたいだ」の意味。 <as
to>で程度が表されるのだから、「まるで岩であるかと思えるほど、岩みたいなほど、岩ほども」となる。
solidは形容詞なのでこの語句全体はCである。
【全訳と解答例】
1891年から1903年の10年あまりの歳月をかけたシベリア横断鉄道の建設は、自然に対する鉄道建設の大勝利のうちのひとつだった。鉄道の線路がそれほどまでに遠く北に敷設されたことはかつてなかったし、線路の敷かれた大地はまるで岩のように固く凍りついていた。
□コラム
□直訳と意訳
直訳と意訳ということばがあります。直訳は、英語の原文の1語1語をたどるように訳す訳しかたのことです。たとえば
He decided to stay there for another 2
weeks.とあったときに「彼はまた別の2週間、そこに滞在することに決めた」とするような訳しかたが直訳です。しかし、これでは日本語になっていないので、日本語訳、ないしは和訳とはいえません。直訳は意味をとるときに頭のなかでひそかにするべきものです。その過程を人さまに見せてはいけません。
意訳というのは、文の部分にはこだわらないで、センテンス全体として意味を的確に表す訳しかたのことです。たとえば、さきほどの英文では、
anotherは形容詞ですが、これを副詞に変えて訳すと「彼はさらに2週間、そこに滞在することにした」となります。原文での品詞にこだわらないで、少しひねると、日本語らしい訳にすることができます。
ただし、このような訳しかたには危険もつきまといます。日本語らしくすることにこだわったばかりに、正確でなく訳してしまうことがあるからです。ここで例にしている文も、単に「さらに」では不正確です。なぜなら、another 2 weeksの意味は、図示すれば
今まで2週間さらに2週間
───|────────|────────|────→
ということで、今までに2週間いたということがあくまでも前提とされているのです。単に「さらに2週間」としただけでは、これまでいたのがたとえば2日だけだったという場合も含んでしまいます。
このようなあいまいさを残さないためには、「彼はそれまで2週間そこに滞在していたが、さらにあと2週間いることにした」としなければなりません。原文よりもだいぶ長くなってしまいますが、それはしかたがありません。品詞のちがいや文字数の多少にこだわらないで、ほんとうの意味を大切にする意訳こそよい訳です。
↑TOP
───────────────────────────
* 3. 話者の考えをつかむ
───────────────────────────
┌────┐┌────┐
助動詞│副詞│挿入│
└────┘└
┌────┐┌────┐
比較│強調│否定│
└────┘└
文章の裏には人がいます。その文章を書いた書き手がいます。この書き手はさまざまなコミュニケーションの技を使います。話ことばと違って、書きことばでは身振りや声の調子で特別な意味を表すことができません。そのために、文章独特の技が発達しています。
書いた人の考えかたやそのときの気持ちや感情が、文章のはしばしにことばとして現れることもあります。ことばとしては現れていないけれども、透明な意味としてそれをつかむことができることもあります。本章では、書き手とのコミュニケーションの取りかたを学びます。
【問題15】<女性>下線部を日本語に訳せ。
On the Women's Liberation Movement's ultimate goal all women are united. They
demand an end to the male superiority which, they feel, dominates
almost every aspect of their daily lives, from the government of their
country to the organisation of their religion and the structure of their
families. (高知大学)
【語句ノート】
□ on〜「〜について」
□ the Women's Liberation Movement「女性解放運動」(the Women's Movementともいう)
□ ultimate「究極の」
□ be united「一致団結している」
□ demand an end to〜「〜を終わりにせよと要求する」
□ male「男性の」
□ superiority「優勢、すぐれていること」(superiorの名詞形。反対は inferiority)
□ dominate「優勢である」
□ aspect of〜「〜の局面」
□ organisation「組織(体),団体」(organizationともつづる)
□ structure「構造(体),組織(体)」
【構文の把握】
挿入構文において文中に挿入される語句というものは、極端にいえば話し手がつける注釈・コメントであり、構文上絶対なければならない要素なのではありません。かっこに入れられていることもよくあって、言ってみればかっこつきの悲しい存在であります。
下線部の挿入節
they
feelについても、このことは言えます。「彼女たちにはそう思えるのだが」という、あってもなくてもいいような意味しか持っていません。挿入節が複雑なもののときは、挿入節を削り取ってみると全体がわかりやすくなります。これはそんなことをする必要がないほど単純なものだけれども、試しに削り取ってみましょう。先行詞から後の部分です。
the male superiority which dominates almost every aspect of their daily lives「彼女たちの日常生活のほぼ全面に支配的である男性優位」
こうすると、まるで一種の真理のような言いかたになります。それではなにか危ないと、男性である筆者は思ったのでしょう。それで
they
feelを割り込ませ、逃げの手を打ったのです。ほんとうはそんなことはないのだが、女性たちはそう思っているというような気持ちです。このように挿入節は話者の気持ちを途中で知らせるようにはたらくことがあります。 挿入語句はいつも文の途中に置かれるとはかぎりません。文の始め、文の終わりの位置に現われることもあります。次の例では文頭と文尾に挿入語句が置かれています。
<As the weather report says>, the rainy season has set in.
挿入節
「天気予報の言うとおり、梅雨入りした」
The weather will hold, <I think>.「この天気はもつと思う」
挿入節
前にも言ったとおり、挿入語句とはかっこつきの存在なので、かっこでくくれることに注意しましょう。なくても文の本体はダメッジを受けません。問題文の最後の語句
from the government ... their familiesも挿入語句の一種で、その前の almost every
aspect of their daily
livesについて説明するはたらきをしています。ただし、これは話者の気持ちとは関係がありません。要するに具体的な説明をするものであります。
【訳しかた】 which,
they feel, dominates〜が which they feel
dominates〜のように、カンマではさまれることなしに言われているときには they
feelはりっぱな主節だから、かっこに入れてはいけません。このときは
They feel (that) the male superiority dominates almost every aspect of their daily lives ...
という文から、 the male superiorityが先行詞として飛び出て
the male superiority which they feel dominates almost ...
となったと考えられ、 they feelは話者の気持ちを表すものというより、世間で公認の事実の一部になる(と少なくとも話者は思っている).
【全訳と解答例】
女性解放運動の究極の目標については、全女性が一致団結している。国の政府を始め、宗教団体や家族というひとつの社会構造にいたるまで、日常生活のほとんどあらゆる局面に蔓延している(と女たちには思われるらしい)男性優位に、終止符を打つよう女性たちは要求している。
【問題16】<若者>次の文章を日本語に訳せ。
Teen-agers
are problems in search of a solution. Most of the problems they are
seeking to solve were created for them by adults. It is, therefore,
not a little amusing to hear adults complaining and criticizing
teen-agers, whom, they declare, they cannot understand.
(お茶の水女子大学)
【語句ノート】
□ teen-ager「ティーンエージャー」(13歳から19歳まで、英語で -teenのつく数字の年代の者のこと)
□ in search of〜「〜を捜し求めて」
□ solution「解答」
□ seek to〜「〜しようとする」(=try to〜)
□ create「作りあげる」
□ adults「おとなたち」
□ not a little〜「少なからず〜、かなり〜」
□ complain「不平を言う、文句を言う」
□ criticize「批評する、けなす」
□ declare「宣言する、きっぱり言い切る」
【構文の把握】
最初の文は隠喩とか暗喩とか呼ばれるレトリック(rhetoric)の形式になっている。隠喩とは
Life is a
voyage.「人生は航海だ」などのように、like((〜のような)ということばを使わずに、ずばり言い切る形のたとえの表現のこと。ここでは人である
teen-agersをものごとである problemsにたとえている。
problems in search of a solutionは
problems that are in search of a solution
「ひとつの解答を求めてやまない問題」
ということで、これは人でないものを人にたとえる擬人法。 第3文は
It is <形容詞> to〜。という形の、形式主語 itの構文。 thereforeは
howeverと並んで、文中に挿入的に使われる接続詞として有名なもの。もっとも、文頭に立つこともある。 関係詞節内に they
declareという挿入節がある。前問の they feel同様、話者がコメントとして使っている。 不定詞の to
hear〜は、感覚動詞がよく取る<VO+〜 ing>の構文をここでも取っているが ,
hear adults [<complaining> and <criticizing teen-agers>] V O 〜ing+〜ing
のように分詞の句が2つ
andにより連結されている。 complainは自動詞なので (complaining and criticizing)
teen-agersと取ることはできない。 なお、 whomは関係代名詞で、先行詞は teen-agersである。
【訳しかた】 hear
adults以下をどう訳すかがポイントになる。カンマつきのwhom,いわゆる非制限(継続)用法の関係代名詞があるが、これも一種の挿入で、言い足りない説明にさらに説明を付け加えるはたらきをする。カンマつきの関係詞はほとんど接続詞に等しい。
本文の場合は、
<, whom ...>⇒ <,and ...>
と置き換えて読む。書いてある順序どおりにいこう。
complainし、criticizeし、あげくの果ては understandできないと
declareする、というようにとらえることができる。 各動詞について。
complainは「ぶつぶつ文句を言う」ことを言い、criticizeは「あらさがししてけなす」ことを言い、
declareは「きっぱり言ってのける」に近い。 complain, criticize ...と続いてきているので、
declareは「公言してはばからない、ずけずけ言っている」ほどまでに感情的成分の多い言いかたになっている。 not a little
amusingは、 not a
littleという副詞句を知らないで訳したとしても、そう大きな意味のとりちがえは起こらないだろう。しかし、文全体が否定文なのではなく、 notは
a littleをしか打ち消していないことをつかんでおくことはたいせつだ。
なお、 problemには trouble-maker(面倒を起こす人)という意味もあるが、この文でその意味は的外れ。 trouble-makerなら、 in search of a solutionなどということはしないからだ。
また英語の teen-agerは厳密には thirteenなど -teenのつく年代しか意味しないが、日本語訳としては「十代の若者」でもよい。
【全訳と解答例】
ティーンエージャーとは解答を捜し求めてやまない問題そのものである。解こうとしている問題の大部分は大人によって彼らのために作り出されたものだ。だから、大人たちが愚痴をこぼしたり、ティーンエージャーのことをけなしたり、あげくの果ては理解できないと言ってのけるのを耳にするのは、少なからずおもしろい。
【問題17】<危険>下線部を日本語に訳せ。
Dangers
seldom come singly: they almost always come in pairs. If there is a
danger on the one hand, there is almost always a danger, of an opposite
kind, on the other hand. Then the greatest danger is to be so intent
on avoiding the one as not to notice the other− until we have fallen
into it, and it is too late. (京都府立大学)
【語句ノート】
□ seldom「めったに〜ない」
□ singly「単独で」
□ in pairs「2つひと組になって」
□ ... on the one hand,〜 on the other hand「一方で。。.他方で〜」
□ of an opposite kind「正反対な種類の」
□ then「それゆえ、従って、それなら、そうとなれば」
□ so ... as not to〜「。。.するあまり〜しない」
□ be intent on〜「〜に熱中している」
□ avoid「避ける」
【構文の把握】 下線部はX
isYの構文で、Xが the greatest danger,Yが名詞的用法の不定詞 to〜 .不定詞の中には<so〜 as not
to ...>の形がある。これは、 <so as not
to〜>(〜ないように)という「目的」の表現とは区別しなければならない。 notは不定詞の中身を否定している。 until we have
fallen into itの前のダッシュは挿入語句を導くはたらきをしている。もちろん
until以下が挿入で、補足的なことがそこで言われている。 until〜の節の中の itは、最初のものが the other
(danger)を指しているが、2つめのものは「時」を表す itであり、特になにか語句を指しているわけではない。
<... on the one hand,〜 on the other hand>の on the one handと on the other handは、「場所」を言う副詞句として使われている。ふつうよく見かける文脈は
On the one hand, .... On the other hand〜。
「一方で。。..だ。しかし他方、〜だ」
という形式であったり、これの On the other handがない形式であったりするが、このときは「場所」の副詞句ではなく、文修飾の副詞としてはたらいているわけだ。
文章のなかほどにある
thenは、前の内容を受けて、「そういうことなら〜となる」のように後に引き継ぎ、話を展開させる役目をしている。
then よりも前の部分は、「理由」や「原因」ほどの強い意味はなく、「前提」ほどの弱い意味しか持っていないが、それでも似ているのはたしかだ。「従って」とか「それゆえ」にあたることもある。
【訳しかた】 soX
as not
toYは、「たいへんXなのでYしない、XのあまりYしない」という「原因-帰結」の意味か、または「YしないほどたいへんX」という「程度」の意味かのどちらかになる。 どちらで訳したらよいかは、まわりの意味、つまり文脈から決まる。この文章の場合、until〜の節の前にあるダッシュに注目したい。これは、挿入を導いているが、単にその役目をしているばかりでなく、間(ま)を取る役目もしている。
until〜はふつうには「〜まで」だが、裏返せば「ついに〜ということになってしまう」という意味も含む。「熱中し、ついに〜となってしまう」までにはあいだがある。その間をダッシュが表現している。 このように、時間の流れを意識した表現になっているので、この文章での
soX as not
toYは、いわば後戻りする「程度」の意味ではなく、「原因-結果」のように前に進んでいく意味あいに取った方がよいことになる。
<be intent on〜>⇒ <not notice the other>⇒ <we have fallen into it>⇒ <it is too late>
の流れを尊重する訳がよい。 It
was not until yesterday that I found him
away.(きのうになって初めて彼がいなくなっているのに気づいた)という文の前半を、「〜になって初めて」と訳すのも、この流れ尊重の姿勢から来ている。
【全訳と解答例】
危険というものは単独でやってくることはめったにない。十中八九2つ組になってやってくる。右手に危険があれば、正反対な危険がたいてい左手にもある。ということなら、最大の危険は、前者を避けることにいっしょうけんめいなあまり後者に気づかなくなることであり、その罠に落ちてしまえばもう手遅れになってしまうのだ。
【問題18】<絵はがき>下線部を日本語に訳せ。
(1)Picture postcards I count as one of life's great pleasures. I am quite unashamed about rushing to the postcard stand anywhere as soon as I can. (2)It
is not views I ever buy, except when I'm abroad, but colour
reproductions of works of art or details of them, almost invariably
pictures. If only the artists of the past could know the pleasure they have given by dint of the art postcard. (3)Their creations, in whole or part, take on new life as symbols of travel, friendship and memory. (京都府立大学)
【語句ノート】
□ count〜 as ...「〜を。。.とみなす」(regard〜 as ...などと同じく、 asにより目的格補語を導く構文)
□ pleasure「喜び、喜びの種」
□ be unashamed about〜ing「〜することを恥じない」(aboutの代わりに ofを使うこともある)
□ reproduction「複製」
□ detail「ディテール、細部の描写」(美術用語)
□ invariably「常に、必ず」(← in+vary+able+ly)
□ if only ...「。。.でありさえすればいいのだが」(願望を表す仮定法の表現)
□ by dint of〜「〜によって」
□ in whole or part「全部にしろ部分にしろ」(=in whole or in part)
□ take on〜「(ある性質などを)獲得する」
【構文の把握】
(1)の文は、目的語を前置した倒置構文。
I count picture postcards as
...ならばふつうの語順。文型の要素であるSVOなどのO(目的語)は、ふつうには倒置されることがないが、文のテーマ(主題)となっているものならば、そのテーマを特にはっきりさせるために文頭に出すことがある。 (2)の
It is not〜。の文は強調構文と not〜 but ...「〜ではなく〜」の構文が組み合わさったもの。強調構文を It isX
thatY。の形式で表すとすると、意味は「YなのはXだ」となり、 It isの後のXが「強調される要素」となる。ここでは
thatが省略されているので、 I ever
buyがYにあたっており、「私が買うのは風景の絵はがきではなく。。.」という意味がまずくみ取れるだろう。この「。。.」にあたるのは、もちろん
but以下の語句になる。図式的に表すと
It isX (that)Y。
----
|→NOT viewsBUT colour reproductions of〜
ということであり、 not〜 but ...の片割れの but以下が、強調される要素の本来の位置Xから右の方にとびだしていることがわかる。
【訳しかた】
(1)の前置された目的語は、「絵はがきは。。.である」のように訳せばよい。日本語では「は」によって、主語のほか、文の題を示すことがある。たとえば「きのうは遊んだ」の「きのうは」は主語ではなく、文の題である。 I
am quite unashamed about〜は、「〜してもまったく恥ずかしくない」ということ。 unashamedは
ashamed「恥じて」の反意語。 (2)にある副詞 everは否定文では「どんなときでも(〜ない),決して(〜ない)」という強い否定を表す。
notと everが合体すれば neverになる。
almost invariably picturesについては、その前に which areを補ってみる。「美術作品なので、 (当然)ほぼ絵画ばかりになる」という訳の「になる」の意味は、この消えている which areのため。
colour reproductions of works of art or details of themは
<colour reproductions of works of art> or <details of them>
のようにつながれている。前後対称形になっている。 color reproductionsとは「カラーの複製写真」、 works of artとは「美術作品」、 details of themとは「その作品のディテール(の写真)」。
(3)はその前の文、 If only ...から続いている。 If only ...の文には「こんなに私が喜んでいるのを知らせられなくて残念」という気持ちが込められている。そこから続いていることを考えに入れて訳す。
【全訳と解答例】 (1)絵はがきは、人生の大きな喜びのもとの一つと私は思う。私はどこに行っても、絵はがき売り場を見つけるとすぐさまかけつけるし、そうしても全然恥ずかしくはない。 (2)私が買うのは、外国にいるときは別にして、決して風景のではなく、美術作品のカラー複製写真のものか、そのディテールのものだから、ほぼ必ず絵画になる。昔の画家たちに、絵はがきによって人に喜びを与えていますよと知らせることができたらいいのだが。(3)画家たちの作品は、その全体にしろ部分にしろ、旅や友情や思い出のしるしとして新しい命を得ることになるのだ。
【問題19】<会話>下線部を日本語に訳せ。
Certain
basic conditions seem to prevail in all conversation, and many of the
details of individual conversations are best understood as attempts that
speakers (and listeners) make to meet these conditions. Above all,
conversation is a social activity and, as such, it shares
characteristics of all social activities. These characteristics we usually take for granted so that it is only their absence we notice. (大阪女子大学)
【語句ノート】
□ certain〜「ある〜」
□ prevail「普及している、どこにでもある」
□ individual「個々の」(それ以上分割不能な1単位)
□ make attempts「試みる、企てる」
□ meet「(必要・条件などを)満たす」
□ above all「何よりも(まず)」
□ as such「それとして、それなりに」
□ share「共有する、分かち持つ」
□ activity「活動」
□ take〜 for granted「〜を当然のことと思う」
□ so that〜「(結果)〜だから、(目的)〜であるように」
□ absence「不在、欠落」(absentの名詞形)
□ notice「気づく」
【構文の把握】
下線部の
these characteristicsは動詞 takeの目的語で、本来
takeの後の位置に置かれるもの。つまり、前問のもの同様、目的語前置の構文。この構文は倒置構文に似てはいるけれども、目的語がただ前に出るだけで語句の倒置が起こらない点で異なる。目的語をふつうの位置に戻すと
We ususally take these characteristics for granted
となる。
「結果」を表す so thatの後に強調構文がある。thatが省略されている。省略を補えば
it is only their absence that we notice
となる。また、ふつうの語順にすれば
we notice only their absence
となる。
最初の文の and以下は
X are best understood asY
の形になっていて、X
= <many of the details of individual conversations>,Y =
<attempts that speakers (and listeners) make to meet these
conditions>である。 attempts that〜の thatは関係代名詞。
【訳しかた】 目的語前置は主題提示の構文だから、These characteristicsは「このような特徴は」と訳して後に続けていけばよい。
強調構文は onlyに注意して「我々が気づくのはその不在だけである」とか「我々はその不在にしか気づかない」とかする。 onlyは否定の意味を含む副詞なので、「〜しか。。.ない」と訳すとうまくいくことが多い。
意味をつかむ観点からは、下線部の文よりもその前の文の方がむずかしい。above
allは「とりわけ、なかでも」と覚えているかもしれないが、とりわけといっても何からとりわけなのか、なかでもといっても何の中でもなのかに注意しないといけない。つまり
allがなんなのかということを読み取らなければならない。 Don't forget I have told you, and above
all don't waste your
money.(私の言ったことを忘れないこと、とりわけお金をむだづかいしないこと)という文なら、あれこれ言われた中でもとりわけ、ということで意味がつかみやすい。しかし、本文の場合、こういったことが言われていない。そのときには「何よりもまず」の意味になる。範囲が限定されずに一般的なものになり、広くなるからだ。
さらに as such「そういうものとして」は、その後の it shares ...にかかっていっていることをつかむことも重要だ。 as suchはこのとき、それよりも前の部分とは関係していない。
【全訳と解答例】
どのような会話にも、ある基本的な条件がいくつかあるようだ。ひとつひとつの会話の細かな部分の多くは、話し手(そして聞き手)がこのような条件を満たすためにする試みととらえれば、最もよく理解できる。何よりもまず、会話は社交的な活動のうちの一つであり、そのようなものとして、社交活動すべてに見られる特徴を同様に持っている。こういった特徴を人はたいていあたりまえのことと思っているので、人が気づくのはその不在だけである。
↑TOP
【問題20】<世界共通語>下線部を日本語に訳しなさい。
Why
must we be in a position of perennial inferiority when we face an
English or French speaker? Why must we be expected to learn their
languages, when they never make an attempt to learn ours? Why can't
there be a compromise language, in which we shall have equality of
opportunity with them, and in which they will stumble around as much as
we do, be at a loss for a word or a construction as much as we are, and
be made to realize, as we constantly are, that their languages are not
the only ones on earth? (松陰女子学院大学)
【語句ノート】
□ position「位置」
□ perennial「永久に続く」(形容詞)
□ inferiority「劣っていること」(inferiorの名詞形)
□ face〜「〜に面と向かう」
□ compromise「妥協、折衷」
□ equality of opportunity「機会の平等、均等」
□ have equality of opportunity with〜「〜と機会が平等である」
□ stumble「つまずく、つかえながら言う」
□ be at a loss「困っている」
□ construction「構文」
□ be made to〜「〜させられる」
□ realize that〜「〜であると悟る、実感する」
□ constantly「常に」
【構文の把握】 下線部に
<as (副詞) as (接続詞)SV>の構文がある。いわゆる<as〜 as ...>の構文。この構文の1つ目の
asは副詞で、「同じくらい」という意味を持つ。後の方のは接続詞で、これにより比較の対象が表される。
つまりこちらは、「〜と」の意味。接続詞なので、後には原則的にSV。。.といった文型式のものが続くのだが、完全な文形式が来ることはあまりなく、SとVくらいで打ち切られることが多い。
they will stumble around as much as we do
(they will) be at a loss for〜 as much as we are
のように取り出してみると、
as much asの後がちょうど疑問文への答え Yes, we doや Yes, we areと同じ、 short
form(短い形式)になっていることがわかる。 we doとは we stumble around muchの stumble around
muchを代動詞の doを用いて指して表しているものであり、 we areとは we are at a loss for〜
much全体を代表する short formである。もっと短くなって doや areが消える形もある。
文全体は、要するに Why
can't there be a compromise language?「なぜ折衷言語はありえないのか?」ということで、 in
which以下はすべて補足。 a compromise languageを先行詞とした<前置詞+関係代名詞>構造は、
andで2つつながれている。
a compromise language, <in which〜>, and <in which ...>
の形が見えるはず。それでも
be at a loss ..., and be made
to〜と連続されるとわけがわからなくなるかもしれない。しかし、同種のものを並べるときには
<A、B、and C>のようにカンマで区切っていって最後だけ andをつける、というルールに思い至れば、2つ目の in
whichの中に、まさにこの形があるとわかるだろう。
A = they will stumble around as much as we do
B = (they will) be at a loss for a word or a construction
as much as we are
C = (they will) be made to realize, as we constantly are,
that their languages are not the only ones on earth
【訳しかた】
as
much as〜は、同等比較といって、単に量や程度が同じくらいだと言うのにも使う。たとえば、 I have as much money as
you.が「お金を同じだけ持っている」という意味で、その実態が100円だったりすることもある。つまり、多くないことも場合によりある。しかし、下線部の
as much asには muchのもともとの意味「多く」が残っている。
opportunity「機会」とは「つまずく機会」のこと。ユーモラスな言い方をしている。
【全訳と解答例】
私たちはなぜ、英語やフランス語を話す人に面と向かうときに、常に劣等な立場に立たなければならないのだろうか。彼らが私たちの国語を習おうとは決してしないのに、なぜ私たちが彼らの国語を習うように期待されなければならないのだろうか。折衷言語はなぜありえないのだろうか。そういうものがあれば、彼らと機会が均等になる。彼らも私たちと同じくらい多くつっかえ、私たちと同じくらい多くことばにつまったり、構文に困ったりする。そして私たちがいつも気づいているように、自分たちの国語だけが世界で唯一の言語ではないのだということに気づくだろう。
【問題21】<人間の言語能力>下線部を Thisの内容がわかるようにして日本語に直しなさい。
Yet the ability to carry out the simplest conversation requires profound knowledge that speakers are unaware of. This is as true of speakers of Japanese as of English speakers. (成城大学法学部)
【語句ノート】
□ yet「しかし」
□ carry out「実行する」
□ simple「単純な」
□ require「要求する、 必要とする」
□ profound「深い」(反対は superficial)
□ be unawre of〜「〜に気づいていない」
□ be true of〜「〜にあてはまる」
【構文の把握】
下線部は<as〜 as ...>の構文。
This is as true of speakers of Japanese as (this is true) of English speakers.
と考えられる。
speakers
of Japanese(日本語の話し手)は speak
Japanese(日本語を話す)というVOの構造から派生した名詞形。「を」で表せるような関係、つまり目的格関係が、もとの構造にも、派生名詞形にも認められるが、派生名詞形の方では、その目的格関係を表すために
ofという前置詞があいだに必要となる。だから、この派生名詞形は「日本語を話す人たち」と訳すこともできる。このことは、単語がもっとむずかしい場合の意味解釈に役立つから、覚えておこう。
第1文は次のように分析される。
<The ability to〜> <requires> <profound knowledge that〜> SVO
Sの主要部は
abilityで、同格関係を表す不定詞がこれに続いている。【問題9】で見たとおり、S全体を<be able
to〜>の名詞化形と見なすことができる。Oの主要部の knowledgeには関係代名詞の thatの節がかかっていっている。S全体は
abilityという無生物主語を主語とする構文になっている。
【訳しかた】
< as〜 as… >の <〜
>の部分には、さまざまな形容詞・副詞が入るが、意味的にその「度合い」というものがありえない形容詞・副詞については別で、それらはこの位置に現れることがない。たとえば
trueは「ほんとうの」という意味のことがある。このとき「少しほんとう」とか「すごくほんとう」とかいう度合いがそもそもありえないので、この意味の
trueが<as〜 as…>構文に出て来ることはない。従って、本文の
trueは「ほんとうの」という意味のものではなく、「あてはまる」という意味のものであると決定できる。 as trueの
asは「同じくらい」という意味だから、 as trueで「同じくらいあてはまる」ということになる。
thisは、もちろん前の文の内容を受けている。前文は<S
requiresO>という無生物主語の文だった。これは「SにはOが必要となる」と訳すとよいが、Sが名詞化形であることに注意して、「〜を実行することができるためにはOが必要となる」とやるともっとよくなる。「〜する能力にはOが必要だ」という訳では、まだ直訳の段階で、日本語としてこなれていない。
the
simplest conversationの訳しかたには注意がいる。この最上級には evenの意味が含まれている。実は even the
simplest conversationということである。なぜそうなるのかは、文脈から決まる。最上級が
evenの意味を含むようになるような文脈というものがある。文章の流れに常に気を配っていると、その意味が見えるようになる。
profound
knowledge that speakers are unaware
ofとは実際に話し手がその知識を用いて会話しているにもかかわらず、自分ではそのようなものによって会話しているとは気づかないような深い知識、ということ。これは具体的には、会話の文法などのことを言っている。
【全訳】
しかし最も簡単な会話でも、それを実行するとなると、話し手自身はそれと気づかないような深い知識がないとできない。このことは英語を話す人たちにもあてはまるが、日本語の話し手にも同じくあてはまる。
【解答例】
深い知識がなければ単純な会話さえできないが、このことは、英語を話す人たちにも日本語を話す人たちにも等しくあてはまる。
【問題22】<『世界自然保護基金』の広告>下線部を和訳しなさい。
There is no time to be lost. We have inherited a rich and beautiful world and I believe that this
present generation alive today has a moral obligation and an urgent
duty to pass on as much of that inheritance as we possibly can to our
children and grandchildren.(弘前大学)【語句ノート】
□ inherit「受け継ぐ」(名詞は inheritance)
□ I believe〜「〜と思う」
□ present「現在の」
□ generation「同時代の人々、世代」(単数扱い)
□ moral obligation「道徳上の義務」
□ urgent duty「差し迫った責務」
□ pass on「伝え渡す」
□ possibly can「できるかぎり」
【構文の把握】
下線部全体はSVOの構文で
S = this present generation alive today
V = has
O = a moral obligation and an urgent duty to pass on〜
となっている。 Oには次の同格の不定詞が含まれている。
<a moral obligation and an urgent duty> <to pass on〜>
意味は「〜を伝える(という)道義と差し迫った責務」である。
<as〜 as ...>は<as〜 asS can ...>の形のもので、【問題13】の絵はがきの話に出てきたものと同じ。 canの後を補えば
as much of that inheritance as we possibly can (pass on) to ...
となる。
なお、
There is no time to be lost.は形容詞的用法の不定詞が受け身形になっている。これは timeは
loseされるもの、という考えから来ている。しかし、 There is no time to lose.とも言える。これは There is
no time (for us) to lose.から来るもの。どちらの言い方でもいい。
【訳しかた】
this
present generation alive todayは this present generation (that is) alive
todayということだが、
generationは「同じ年齢層の人々皆、同じ時代の人々皆」をひっくるめて言う語であることと、単数として扱われることに注意しよう。 children,
grandchildrenも現代に生きている一員と言えるが、そこを厳密に区別するようには筆者は考えていないし、それがふつうの考えかた。逆に言えば、
the coming generation(次代の人々)の意味で children, grandchildrenと言っているわけだ。
dutyと obligationの訳し分けはむずかしい。どちらもふつうには「義務」であり、そう訳して間違いではない。しかし、ここでは両方が並んでいるので、その差を無視するわけにはいかない。
dutyと
obligationの違いは、何によって縛られるのかによる。 dutyは職業や社会の中での役割から来る束縛のことを言い、
obligationは主に約束ごとからの束縛のことを言う。だから dutyは「職務・仕事・任務」などの意味にもなり、
obligationは「義理・恩義」などの意味にもなる。従って、 a moral obligationを「道徳上の義務、道義」と訳したら、 an
urgent dutyの方は dutyを「仕事」に近い意味と考えて、「差し迫った責務」のようにするとよいだろう。
不定詞の中の動詞
pass onの目的語<as much of that inheritance as we possibly can>は、 as
much as we can(できるだけ多く)とほぼ同義。これに修飾語句によって表されている意味をつけたせばよい。 much of that
inheritanceは that inheritanceが「その受け継いだもの」という意味で、 inheritanceは
knowledgeなどと同様、抽象的なものを言う言い方になっている。それで muchが使われている。
possiblyという副詞は文を修飾する副詞としては「ことによると、もしかすると」の意味。しかし、ここの possiblyはその用法とは別物。 canといっしょに使い、 possibly canで「できるだけ」の意味になる。
【全訳と解答例】
一刻も猶予はならない。私たちは豊かで美しい世界を先人から受け継いだのだから、今日生きているこの今の世代には、その受け継いでいるものをできるかぎり多く子孫に伝える道義と差し迫った責務があると私は考える。
【問題23】<よいということと悪いということ>下線部を日本語に訳しなさい。
After all, badness is as real a possibility as goodness. The car which
one purchased in the hope and expectation that it would be a good car
can turn out to be a lemon, constantly laid up in the shop for repairs.
The children whom one raised to be good citizens can turn out to be
evil, and in becoming evil they are fulfilling possibilities in as real a way as would be the case if they became good.
(関西大学法学部)
【語句ノート】
□ badness「悪いということ、わるさ」(badの名詞形)
□ real「現実の、真の」
□ possibility「可能性、実現性、起こりうること、ありうること」
□ purchase「購入する」
□ in the hope and expectation that〜「〜となるだろうと願い、また期待して」
□ turn out to be〜「〜であると判明する」
□ a lemon「欠陥車、欠陥製品」
□ constantly「しょっちゅう(〜している)」
□ lay up〜「〜を修理工場に入れる」
□ shop「工場」(repair shop「修理工場」)
□ in〜ing「〜するときに」
□ fulfill「満たす、果たす、実現する」(fulfilとも綴る)
□ the case「実情」
【構文の把握】
下線部は
<in becoming〜> <they> <are fulfilling> <possibilities> <in〜>
副詞句S V O 副詞句
と解析される。2つ目の副詞句は
in a way(あるしかたで)の語句に<as〜 as ...>の修飾語句がついて複雑になったもの。 asと asのあいだに a
real possibilityのような<冠詞>+<形容詞>+<名詞>構造が来ると、形容詞が
asに引かれて前に出て倒置が起こる。この倒置は<as〜 as ...>ばかりでなく、次の例にあるように<so〜 that
...>や<too〜 to ...>などでも起こる。
His was so good a plan that we all agreed to it.
「彼のはたいへんよい計画だったので私たちは皆、それに賛成した」
It was too cold a day to play outside.
「外で遊ぶには寒すぎる日だった」
ここの<as〜 as ...>のむずかしさの原因はまだある。2つ目の asが関係代名詞であること、さらにその関係詞節の中身が仮定法であること、この2つが重なってむずかしくなっている。
【訳しかた】 この文章はもっと長い文章の一部。文章全体は「自分の可能性を実現することがすなわち善であるとは必ずしも言えない。悪いものも悪いものなりに自己の可能性を実現したのだ」ということを主旨としている。
as
real a possibility as〜と in as real a way as〜の2つに含まれている
realは前者が「現実の」、後者が「真の、正真正銘の」の意味であると思われる。 a real possibilityとは a
possibility that is realということであり、「現実にある可能性、現実に起こりうること」の意味に近い。一方、 in a
real wayの realは「にせものでない正真正銘の」の意味だ。
as would be the case if they became goodはふつうの文の形に変えて考えるといい。asの先行詞の a real wayを thatで置きかえて表すと
That would be the case if they(=the children) became good.
「もし良い人間になったとしたら、それがそのときの実際であろう」
これが先行詞の
a real
wayにかかっていっているのだから、直訳すると「もし良い人間になったとしたら、そのときの実際であるような正真正銘のしかたで」ということになるが、これはつまり、良い人間になるなり方がにせのものでないのと同じように、悪い人間になるなり方も、いつわりのものでなく、りっぱにほんとうのことなのだ、という意味。これはさらにつまり、良くなるのも自己を実現したのだし、悪くなるのも自己を実現したのだということ。
このことは、実は冒頭の文
After all, badness is as real a possibility as
goodness.につながっていく。そこに前もってまとめられてあったのである。英語の文章では、いつもそうだとはかぎらないが、よく段落の最初に、段落の内容のまとめをしている文(topic
sentence)がある。
【全訳と解答例】
結局、悪いものもよいものと同じくらい現実にありうることなのだ。よい車だろうと大いに期待して買った車が欠陥車とわかり、しょっちゅう修理工場に持っていくこともある。善良な市民たれと育て上げた子なのに悪者になってしまうこともある。彼らは悪者になる過程において、仮によくなったとした場合と同じく、正真正銘、可能性を実現しているのである。
【問題24】<寓話>下線部を和訳せよ。
A seal who lay basking on a large, smooth rock said to himself, :all I ever do is swim. None of the other seals can swim any better than I can, he reflected, but, on the other hand, they can swim just as well.
The more he pondered the monotony and uniformity of his life, the more
depressed he became. That night he swam away and joined a circus.
(電気通信大学)
【出典】 James Thurber, "The Seal Who Became Famous"
【語句ノート】
□ seal「アザラシ」
□ lie〜ing「横になって〜している」
□ bask「ひなたぼっこする」
□ say to oneself「心のなかで思う」
□ reflect「じっくり考える」
□ on the other hand「他方、これに反して」
□ ponder「じっくり考える」(文語的)
□ monotony「単調さ」(形容詞は monotonous)
□ uniformity「画一的であること」(形容詞は uniform)
□ be depressed「気が滅入っている」(反対は be cheered up)
【構文の把握】
下線部は None of the other sealsをSとする否定文。このような否定文は
Some of the other seals can swim some better than I can ...
「他のアザラシたち何人かは自分よりいくらか上手に泳ぐことができる」の文頭の
Someが Noneに変わってできるものと考えられる。「いくらか」の意味の someは否定文中では anyに変わるので、 some
betterが any betterとなり、本文の形となる。 <none any ...>は<not any
...>同様、「まったく。。.でない」という意味を表すので、「他のアザラシたちは誰も自分より上手に泳ぐことはできない」という意味になる。
これはSに否定要素がついてできる否定文であるが、否定要素がVにつくと
Some of the other seals can't swim any better than I can ...
「他のアザラシたち何人かは自分より上手に泳ぐことはできない」
という否定文になる。また、否定要素が anyにつくと
Some of the other seals can swim no better than I can ...
「他のアザラシたち何人かは自分より上手に泳ぐことはできない」
となる。いずれにしろ、 None of〜の否定文とはだいぶ意味が異なる。
just
as wellは just as well as (I can)ということ。口語では<as〜 as ...>の前に
justが置かれることが多い。 下線部の次には<the+比較級、
the+比較級>の構文がある。「〜すればするほどますます〜」の意味。
all I ever do is swimは all (that) I ever do is (to) swimということ。 be動詞の補語の不定詞の toはしばしば省略される。 everは意味を強めるはたらきだけしている。
【訳しかた】
any betterの any(肯定文で some)は「いくらか」という程度を表す副詞。much, a littleなどのなかま。
but,
on the other
handは「しかし、他方」「しかし、見方を変えると」という意味で、これによって、あざらしの思考が別方向へ転換したことがわかる。ただ、そうは言っても
None of the seals can swim any better than I canと they can swim just as
wellとでは、ものごとを否定的に眺めるか肯定的に眺めるかの色あいの違いしかなく、核心のところは変わらない。そのために、ユーモラスな響きが出ている。
ponderはここでは他動詞として使われているが、自動詞用法もあり、そのときは ponder over(on)〜のようにあいだに前置詞をたてる。 ponderも reflectも「じっくり考える」という意味。
<The+比較級〜、 the+比較級〜>の構文は入試によく出る。
【全訳と解答例】
大きな、滑らかな岩の上で横になってひなたぼっこしていたアザラシ君が、心の中で思った。ぼくがやることといったら、泳ぐことだけだな。ほかのアザラシで、ぼくよりじょうずに泳げるものはいない。ただ、しかしだ、それでも、みんな同じくらいには泳げるぞ。アザラシ君は、自分の生活が単調で画一的であることについて考えをめぐらせるにつれ、ますます気を滅入らせていった。その夜アザラシ君は泳いでいってサーカスに入った。
↑TOP
【問題25】<こども>下線部を日本語に訳しなさい。
The child becomes less dependent upon parents and adult authorities and more dependent upon his age mates quite early. In
an investigation of children's behavior in preschool, it was found that
the children occupied themselves with trying to get the attention and
interest of adults much less than with trying to win the approval of
their contemporaries. It was the other way around in a group of two-year-olds. (岩手大学-人文社会科)
【語句ノート】
□ be dependent (up)on〜「〜に頼る」(dependentは dependの形容詞形)
□ authority「権威のある人」
□ age mate「同年令の仲間」(=agemate参考: teammate, classmate)
□ investigation「調査」(動詞は investigate)
□ behavior「行動」(動詞は behave)
□ preschool「幼稚園、保育園」(名詞 preschool形容詞 preschool)
□ occupy oneself with〜「〜に従事する、〜で忙しい」(=be occupied with〜)
□ attention「注目」
□ approval「承認」(動詞は approve)
□ contemporary「同年者、同時代の人」(形容詞としては「現代の」の意味)
□ the other way around「あべこべ」(=the other way round)
【構文の把握】 下線部の
it was found that〜は、itを仮主語とする構文。
that節の中に<比較級+than〜>による比較構文が含まれている。 much less thanの
muchは「ずっと」の意味の修飾語であるから、 <〜 less than
...>の関係さえつかめばよい。何が何より少ないのだろうか?ここでは前置詞句<with〜>2つが比べられている。
the children occupied themselves <withX> much less than <withY> --------------
X = trying to get the attention and interest of adults
Y = trying to win the approval of their contemporaries
第1文では <less〜> and <more〜>の moreと lessの対照に注目する。【訳しかた】
<it
was found that〜>の仮主語の構文は「〜ということがわかった」という意味。 itは that節の内容を指しているのだから、
that節を itのとこ ろに入れて訳せばよい。 <be found that〜>は<find that〜>の受け身形。
find that〜は「〜とわかる、〜と知る」の意味。
that節の中は、Sが the childrenで、Vが occupied
themselves
with〜であるが、Vの部分は「もっぱら〜ばかりしている」というように訳せば自然になる。 もっぱら何をしているのかは「対象」を表す前置詞
withによって導かれている。【構文の把握】で見たとおり、それは
withX much less than withY
という形の比較構文で言われている。文字どおりにとれば「Yよりもずっと少なくXに」となるが、このようないわばマイナス方向の意味であると、読む側が意味を取るのに苦労することになるので、プラスの方向に、つまり
much more thanの方向に変えてしまって訳した方がずっとよくなる。
attention, interst,
approvalの訳は、 attentionは「注意」よりも「注目」、 interestは「興味」よりも「関心」、
approvalは「承認」よりも「認められること」の方が、それぞれよい。これは文脈と国語の問題。
approvalは、場合により「認めること」にも「認められること」にもなりうる。
In an investigation of
children's behavior in preschoolの
inには、「時」を表す<in〜ing>の表現に通じるところがある。この書きかえは Whe they investigated
children's behavior in preschool, they found
that〜のようになるであろう。従って「調査が行われたときに」と訳してもよいが、単に「調査で」で済ませるのもよい。 their
contemporariesは最初にある his age matesと同義。前者が theirと複数で受けられているのは、主語が
childrenだからで、後者が hisと単数で受けられているのは、主語が the childだから。 the
childは「〜というものは」という意味を表す用法。「そのこども」という意味ではない。
【全訳と解答例】
こどもというものは、たいへん早くから両親やおとなの権威者に頼る度合いが少なくなり、同年令の仲間に頼る度合いが増える。幼稚園のこどもについてのある調査で、こどもたちはおとなの注目や関心をひくことよりも、同年令の者に認められようとすることの方にずっと熱を入れることがわかった。2歳児ではこれが逆だった。
【問題26】<記憶とまばたき>下線部を和訳せよ。
The
relationship between memorizing and blinking seems clear. People asked
to commit series of letters to memory are most likely to blink shortly
after they are given all the letters to be stored. The more letters they
are asked to memorize, the more time passes until the blink. The brain needs more time to store six letters than it does two. (東京工業大学)
【語句ノート】
□ relationship「関係」
□ memorizing「覚えること」
□ blinking「まばたきすること」
□ commit〜 to memory「〜を記憶する」
□ series of〜「ひと続き」
□ letter「文字」
□ be likely to〜「〜しそうだ、〜することになりそうだ、〜するようだ」
□ shortly after〜「〜のすぐ後に」
□ store「(記憶などに)とどめる、頭の中に入れる、蓄える」
□ brain「脳」
【構文の把握】
下線部の文は
<The brain> <needs> <some time> <to store six letters>
S V 0 副詞句
の文の someが moreに変わり、その moreが<than it does two>を引き連れたと考える。 someが moreに変わるという考えはおかしく思えるかもしれないが、 someを muchにするともっと意味的におかしくなる。
<than it does two>は
than the brain needs (some time to store) two (letters)
↓↓
it does
のようにしてできた short form.
第2文の People asked to〜。は<SV+副詞節>の構文で、
S = Peple (who are) asked to〜
V = are most likely to blink
副詞節 = shortly after〜
である。Sの中に<ask
(人) to〜>の受け身にあたる形<be asked to〜>が含まれていることに注意。Vは動詞 blinkに<be
likely to>という助動詞がついたものであり、助動詞の中の likelyは mostによって修飾される形になっている。
第3文の <The+比較級〜、 the+比較級〜>の構文では、 memorizeの目的語の the more lettersが一括で前に出ている。文法的な単位としてのかたまりは、崩れることがない。
【訳しかた】
to store six lettersは「目的」を表す副詞的用法の不定詞。不定詞の形容詞的用法と副詞的用法の区別は、文の意味から判断するが、副詞的用法のものは一般に形容詞的用法のものよりもいくらか長めになっている。
<more〜 than ...>の部分は、 than以下が short formになっている点を除けば、比較表現のふつうのものであるから、むずかしくはないだろう。
第2文は、まず構文分析によって大まかな意味をとらえ、それからこまかい部分の意味を取る。
<be likely to〜>は、ふつう「〜しそうだ」と訳す。たとえば It's likely to rain in the
afternoon.は「午後には雨になりそうだ」という意味。このとき
likelyは「近い未来にあることが起こりそうに見受けられる」という意味を表すが、ここでは「まばたきしそうだ」の訳は当たらない。むしろ、「〜するようだ、たぶん〜することになる」のような一般的な「不確かな推量」の意味に取る方がよい。また、
mostは、話し手の主観的な判断を示す形容詞・副詞につくもので、意味は veryに同じ。結局 are most likely to
blinkのところは「よくまばたきするようだ」くらいの意味である。
all the lettersの後の to be storedは「覚えられるべき」という意味の形容詞的用法の不定詞。
【全訳と解答例】
記憶することとまばたきすることのあいだの関係はあきらかなように思える。一つながりの文字列を記憶するように言われた人たちは、脳に蓄えるべき文字が全部示された直後によくまばたきするようだ。覚えるように言われた文字の数が増えれば増えるほど、まばたきまでにかかる時間は長くなる。脳は2文字を蓄えるよりも6文字を蓄える方が、より長い時間を必要とする。
【問題27】<服装とことば>下線部を和訳しなさい。
Casual
dress, like casual speech, tends to be loose, relaxed and colorful. It
often contains what might be called "slang words": blue jeans, sneakers,
baseball caps, aprons, flowered cotton housedresses and the like. These
garments could not be worn on a formal occasion without causing
disapproval, but in ordinary circumstances they pass without remark. (お茶の水女子大学)
【語句ノート】
□ casual「ふだん着の」
□ dress「服、服装」
□ tend to〜「〜しがちである」
□ loose「しまりがない、だらしがない」
□ relaxed「ゆるんでいる」
□ contain「含む」
□ what is called〜「いわゆる〜」
□ slang「俗語」
□ apron「エプロン」
□ flowered「花柄の」
□ cotton「綿(の)」
□ housedress「家庭着」
□〜 and the like「〜など、〜およびその同類」
□ garment「衣服」
□ can[could] not ... without〜ing「。。.すれば必ず〜する」
□ foraml「公式の」
□ occasion「折、機会」
□ cause「引き起こす」
□ disapproval「非難、不賛成」(approvalの反意語)
□ ordinary「ふつうの」
□ circumstances「状況」
□ pass without remark「黙って見逃される」(remark「言」)
【構文の把握】
下線部の前半は<could not ... without〜ing>「。。.すれば必ず〜することになる」という否定表現により文が組み立てられている。 couldは仮定法から出た「ていねい表現」(【訳しかた】参照).この表現はたとえば、
You cannot look at her without admiring her beauty.
「彼女のことを見れば、きっとその美しさに感動するよ」
のように使う。 cannot(can not, could not)は neverに変わることもある。
They never meet without quarreling.「会うと必ずけんかする」
のように。
仮定法の文において<without〜>を「条件」の句として使うことがあるが、それとこれとは区別されなければならない。たとえば
Without water, we could not live.
「仮に水というものがなかったとしたら、私たちは生きられない」
は仮定法の文だが、その<without〜>の句は if〜で表すことができるような条件を言っている。しかし、 <could not ... without〜ing>の without 〜は「条件」ではない。
【訳しかた】
英語では断言調を避けるためのていねい表現が発達している。助動詞の would, might, couldなどにも、仮定法から出たていねい表現の用法が、仮定法とは別のものとしてある。
ここで言うていねい表現とは敬語とは異なる。はっきり言わないでぼかして言う言いかたのことを言っている。たとえば
canが「できる」なら、
couldは「できよう」くらいである。形は過去形と同じなので、一見「過去」を表すように見えるが、表す時間は「現在」。その点は、元の仮定法過去と同じ。
could「できよう」の「できる」とは、下線部の主語
these garmentsの「能力」を言っているのではなく、受け身形になる前の主語 youについて言っているもの。 You could
wear these garmets ...と言うのと同じだから、この couldは「能力」ではなく「可能」の意味のもの。
on a
formal occasionと in ordinary circumstancesは対比的に並んでいる。
occasionは「折、機会」の意味。特別の、という意味が暗示されているので、 a formal
occasionは「公式の席、公式の場」という日本語がぴったりするだろう。
circumstancesにはこの意味あいはない。「公式の席」という日本語の後に出てくることになるので、 ordinary
circumstancesは「ふだん」で十分。
cause disapprovalと pass without
remarkも対比的になっている。対比的になっているので、対比させて訳す。前者は直訳すると「非難の感情を引き起こす」ということで、人間の心の中のことを言っている。「非難の声が上がる」ところまでは行っていない。後者の直訳は「ことばなしに通される」ということだが、これも「黙認される」くらいの意味。
【全訳と解答例】
ふだん着はふだんのおしゃべりのようなもので、しまりがなく、ゆるく、はなやかになりがちである。ふだんの会話にはいわゆる「俗語」的なものが含まれるが、ブルージーンズ、スニーカー、野球帽、エプロン、花柄の家庭着なども、それと同じだ。こういった服装は、公式の席で着るなら必ず顰蹙をかうことになるだろうが、ふだんならば、黙認される。
【問題28】<アリストテレス>下線部の内容を日本語で表しなさい。特に、"do so"の内容は具体的に明示しなさい。
To
avoid the various foolish opinions to which mankind is prone, no
superhuman genius is required. A few simple rules will keep you, not
from all error, but from silly error.
If the matter is one that can
be settled by observation, make the observation yourself. Aristotle
could have avoided the mistake of thinking that women have fewer teeth
than men, by the simple device of asking Mrs Aristotle to keep her mouth
open while he counted. He did not do so because he thought he knew. Thinking that you know when in fact you don't is a fatal mistake, to which we are all prone.
(横浜市立大学商学部)
【語句ノート】
□ avoid「避ける」
□ mankind「人類」
□ be prone「(そう)なりがちな」
□ superhuman「超人的な」
□ genius「天才」
□ keep〜 from ...「〜を。。.から遠ざける」
□ silly「愚かしい」
□ matter「問題」
□ settle「解決する」
□ observation「観察」(動詞は observe)
□ device「工夫」(第一の意味は「機械装置」)
□ in fact「実際(は)」
□ fatal「致命的な」
【構文の把握】
<not〜 because ...>は「。。.だから〜なのではない」のように「他に理由があったことをほのめかす」意味になることがある。たとえば
The thousands of American soldiers who took drugs in Vietnam did not do so because they wished to become addicts.
は「ベトナムで麻薬をやったたくさんの米兵士たちは、中毒患者になりたいと望んだからそうしたのではない」の意味になる。 しかし、ここの not〜 because ...はそれではなく、「。。.だから〜しない」の意味。前者は
Because they wished to〜、 the thousands of American soldiers ...のように becauseを前に取り出すと、まったく意味が取れなくなる。後者はそうしてもだいじょうぶで、
Because he thought he knew, he did not do so.
と書きかえても同じ意味。
「。。.だから〜しない」の意味のときの notはVの部分に置かれてはいるものの、意味的には<not + because ...>のように becauseの節にかかっている。
because he thought he knewは
because he thought he knew that women have fewer teeth than men
ということ。
【訳しかた】 do
soは ask Mrs Aristotle to keep her mouth open while he countedの部分を指す。
countedが過去形なのは、この節が所属している文が仮定法過去完了の文だから。仮定法の文が、別の仮定法でない文の従属節になると、時制の一致は受けず、もとのままの形でそのまま置かれるが、本文はそれとはまったく反対の場合で、主節が仮定法、
while he countedの節は不定詞の句 to keep ...の一部、その不定詞は by the simple device of
asking
...という句の一部という、いわば奥の奥といった構造になっている。そこまで来ると、現実にはなかったことなのだが、あえて主節に合わせて仮定法過去完了の形<had
counted>にすることはない。なお、 by the simple〜の句は、仮定法の if節に相当する意味を担っている。
【全訳と解答例】
人の陥りやすいさまざまな愚かしい考えを避けるためには、超人的天才はいらない。単純なルールを2、3知っていさえすれば、過ちのすべてではないにしても、ばかげた過ちは犯さないものだ。
問題が観察によって解決されるようなものなら、みずから観察するべきである。アリストテレスも、ほんの少し頭をはたらかせて奥さんに口をあけさせて数えたなら、女性は男性より歯の数が少ないというような思い誤りを避けることができただろう。彼はわかっていると思い込んでいたので、そうしはしなかった(=奥さんに口をあけさせて歯の数を数えることはしなかった).実際わかっていないのにわかっていると思いこむのは致命的なまちがいだが、これはだれにもよくあることである。
↑TOP
【問題29】<神秘的なもの>下線部を日本語に訳しなさい。
It
is the business of fiction to embody mystery through manners, and
mystery is a great embarrassment to the modern mind. About the turn of
the century, Henry James wrote that the young woman of the future,
though she would be taken out for airings in a flying-machine, would
know nothing of mystery or manners. James had no business to limit the prediction to one sex; otherwise, no one can very well disagree with him. (慶応義塾大学文学部)
【語句ノート】
□ fiction「小説」
□ embody「形にあらわす」(← em+body)
□ mystery「神秘」(非常に抽象的な意味で用いている)
□ manners「小説作法、技法」
□ embarrassment「困惑させるもの」(動詞はembarrass「困惑させる」)
□ modern mind「現代人」
□ turn「変わり目」
□ Henry James「ヘンリー・ジェームズ」(1843-1916)
□ airings「戸外の運動・散歩・ドライブ」(原義は「空気にさらすこと」)
□ have no business to〜「〜する権利・筋合いがない」
□ prediction「予言」
□ otherwise「その他の点では」
□ disagree with〜「〜と意見が異なる」
【構文の把握】 下線部と、その付近に、否定語が3つある。nothingが1つ、no〜が2つ。さらに、否定的接頭辞
dis-のついた disagreeもある。 noや nothingなどは、notと同じくふつう文全体を否定する。the young woman
of the future以下は
The young woman of the future would not know anything of mystery or manners.
と言いかえることができる。no〜や nothingなどを<not〜 any ...>に読みかえてみるのは、こういった否定語に対するときの基本。
ただし、 have no business to〜は、この言い替えがきかない慣用表現。
None of your business!「よけいなお世話だ」
などから類推して、意味を把握したい。
下線部の文の otherwiseは、副詞。命令文やそれに近い文の後に来て「そうでなければ」の意味で使われるときには、接続詞である。
Henry James wroteに続く that節の中では、接続詞 thoughで始まる節が文のSの後に割り込む形で挿入されている。
【訳しかた】
limit
the prediction to one
sexは、女性についてだけそのように言う、という意味。その前まで含めると、ジェームズが将来の女性は神秘なものと無縁になるだろうと言った発言に対して、女性だけに限ったのはどんなものかというふうに反対していることになる(筆者は女性).
そしてこのことが、
otherwiseによって受けとめられて、後半に続いていく。
otherwiseは副詞としては「その点を除けば」または「その他の点では」を意味し、指示語的なところがある。「その点を除けば」の「その点」とは、ジェームズが対象を女性にのみ限ったことを指している。 otherwiseに続く
no one can very well〜はむずかしい。no oneと disageeと very
wellの3つの語句の意味が互いに反応しあい、干渉しあっている。まず、 no oneと
disagreeとのからみあいは、2重否定と呼ばれるもの。disagreeは
agreeの反意語であり、言い換えれば<not+agree>で、否定的意味を含む。これにさらに
notがからむと、肯定したのとだいたい同じことになる。次に、 no oneと very
wellとでは、「たいへんよくはだれも〜できない」という、部分否定的な意味が生み出される。合わせると、「たいへんよくは誰も反対できない」という意味になる。
最初のところに出てくる andは butに近い。 butは逆接の接続詞で前後まったく逆のことを言うのに使われることが多いが、ここはかなりそれに近い。
mannersは小説の技法のことを言っている。
【全訳と解答例】
神秘を技法を通して具象化するのが小説のはたらきであるが、神秘なるものには、現代人はたいへんなとまどいを覚える。未来の若い女性は、飛行機でちょっとお散歩に連れ出されることはあっても、神秘や技法についてはまったく何もわからないだろうと、ヘンリー・ジェームズは世紀の変わりめの頃書いた。その予言を女性にだけ限定する権利はジェームズにはなかった。その点を除けば、だれも彼の言ったことにまっこうからは反対できないだろう。
□コラム
□誤訳
誤っている訳を誤訳といいます。誤訳はもちろん避けなければなりませんが、自分の力が及ばないためにまちがった訳をこしらえてしまうことは、よくあることです。単語の意味を知らないために、訳文の意味がとんでもない方向に行ってしまうこともあります。構文をとりちがえたために、原文の意味からまったくかけはなれてしまうこともあります。
知らない単語が英文の中にあったときの対策は、まわりの意味から考えてなるべく当たっていると思われる日本語を書くことです。文章は最初の1単語の意味から始まる意味のつらなりととらえることができます。その意味のつらなりのことを文脈といいます。文章に文脈があるために、たくさんの意味を持っている単語でも、その文章の場合での特定の意味になるわけです。知らない単語ばかりのときはむりですが、もしそれが1つか2つなら、文脈からしてたぶんこういう意味なのではないかと推量して、意味を当てることができます。1つ2つ知らない単語があっても、あわてふためく必要はまったくありません。日本語の文章にしても、そのようにして読んでいるはずなのですから。 知らない英単語をそのまま日本語の文章の中に埋める誘惑にかられる人がいます。これはその問題の全体の点数が少ないときには、誤訳の場合と同じくらいしか減点されませんが、配点が大きい場合には、誤訳よりもっと点を引かれることになります。やめておきましょう。
構文のとりちがえも、誤訳の原因になります。構文をとりちがえるのは、その構文を知らないためのことも、知っていながら気づかないためのこともあります。知らない場合はどうしようもありませんが、知っているのに見逃してしまう、あるいはとりちがえるという場合は、結局その文全体の意味の方向が押さえきれていないためにそうなることが多いようです。やはり、ここでも文脈が重要になります。下線部訳問題は意地の悪いことに、とりちがえやすい構文を含むものがほとんどですから、下線部以外の部分を注意して読んで、意味の方向をはっきりさせてから訳すべきです。
↑TOP
───────────────────────────
4 語句の意味をつかむ
───────────────────────────
┌────┐┌────┐
│名詞化 ││指示語 │代表現│
└────┘└
┌────┐┌────┐
│冠詞 ││前置詞 │省略│
└────┘└
文章の語句はイメージとしてとらえることができるときに
最もよく理解できる。抽象的な言い方の語句も、具体的に言
い換えてとらえると、ぐっとイメージが湧くことがある。人
はあらゆることに名前をつけたがる動物だが、その名前もも
とは実体のあるものごとだったのだ。
ことばのこまかなしくみによって、意味が左右されること
も多い。英語では前置詞によって話を切り盛りしていく。ま
た、冠詞にはコミュニケーションのための特別の用法がある。
指示語はことばを節約するしくみ。省略もそれと同じ。人間
はことばにも経済を持ち込む。この章では、イメージのとら
えかたとことばのこまかなしくみを中心に勉強する。
【問題30】<環境>次の文を訳しなさい。
Earthquakes and volcanoes are outward signs of Nature's unending reconstruction of the planet's surface. (広島大学)
【語句ノート】
□ volcano「火山」
□ outward「外に向かう、表に現れた」
□ sign「しるし、兆候」
□ Nature「自然の神、造物主」
□ unending「終わりのない」
□ reconstruction「再構築」(← re+construction)
□ the planet「地球」(=the earth)
□ surface「表面」
【構文の把握】 センテンスがかたまって名詞節や名詞句になることを「名詞化」という。たとえば
The mother loves children.
「母親というものはこどもを愛するものだ」
という文を名詞句にかためると
the mother's love for(of) children
という形になる。 問題文の中には<A ofB>の形の句が2つある。このうち2つ目のものは
Nature unendingly reconstructs the planet's surface.
⇒ Nature's unending reconstruction of the planet's surface
のようにしてできたものと考えることができる。名詞句になる前のもとのセンテンスはおおまかにいって
<Nature> <reconstructs> <the planet's surface>
S V O
と分析できるので、このときの名詞化のプロセスは次のようにまとめることができる。
SVO ⇒N1'sN2 ofN3
N1〜N3はその順にS、V、Oにそれぞれ対応する。所有格の形になったものがもとの主語、
<N2 ofN3>は、もとのVOとなっている。VOのあいだにあった関係と同じ関係が、N2とN3のあいだにもひきつがれる。 この
ofは辞書などでは「目的格関係を表す of」と呼ばれているが、その意味は「VO関係を表す」ということである。
1つ目の<A ofB>の方は、単に sign of〜 =「〜のしるし」と考えればよい。
【訳しかた】
outward
signsの outwardは形容詞。
-wardは「方向」を表し、いろいろな名詞について、そちらへ、という意味の形容詞や副詞を作ることができる、たいへん造語力の強い接尾語。たとえば
seaward「海に向かった、海からの、海の方へ」とか bedward「ベッドの方の(へ)」とかがその例。 副詞を作るときには
-wardsのように sをつけるが、アメリカでは -wardとすることが多い。 signsは「しるし」であるから、 outward
signsで「外に現れたしるし」ということになる。 このしるしが何のしるしかは、ofの後を見ればわかる。 Nature's enending
reconstruction of the planet's surfaceのしるしだ。 Natureは
natureの擬人法で、「自然の神、造物主」という意味。 Fate(運命の女神), Fortune(運命の神),
Death(死に神)など、大文字で始まる神さまが英語にはたくさんいる。このうちの自然の神様が、絶えず地球の表面を造りかえていて、そのしるしとして地震や火山活動が起こると言っている。 unendingという形容詞は不思議な語だ。分詞から出た形容詞としても、反対の
endingという形容詞はない。 a disease ending in
death(たすからない病気)という分詞としての用例はあるが、ふつうの形容詞として辞書の見出しに載っていることがない。過去分詞の
endedの方も形容詞化していない。しかし、 unended(未完の)という形容詞はあり、また
unending(終わることのない、たえまない)という形容詞もある。法律用語を除いて、 saidという形容詞はないが、
unsaid(口に出して言われていない)という形容詞はある。それに似ている。
【全訳と解答例】
地震や火山は、自然の神がたえまなく地球の上を造りかえていることの目に見えるしるしである。
【問題31】<精神と身体>下線部を日本語に訳せ。
At the moment, the biggest problem is this: We
have a certain commonsense picture of ourselves as human beings which
is very hard to square with our overall 'scientific' conception of the
physical world. We think of ourselves as conscious, free, mindful,
rational agents in a world that science tells us consists entirely of
mindless, meaningless physical particles. (神戸市外国語大学)
【語句ノート】
□ at the moment「目下、現在」
□ commonsense「常識的な」(形容詞)
□ square with〜「〜と一致する、適合する」
□ overall「概括的な、大まかな」
□ conception「概念、観念」(動詞は conceive)
□ physical「物理的な」
□ conscious「意識というものを持つ」
□ mindful「思慮深い」(mindlessの反意語)
□ rational「理性のある」
□ agent「行為者」
□ consist of〜「〜から成る」
□ entirely「まったく」
□ particle「分子、粒子、素粒子、小片」
【構文の把握】
前問同様、ofによる句が2つある。抜き出してみよう。
1. a certain commonsense picture of ourselves as human beings 2. our overall 'scientific' conception of the physical world
2.の句になる前のもとのセンテンスは、だいたいのところ
We conceive of the physical world as ...
のようになると考えられる。conceiveは<conceive
of〜 as ...>(〜を。。.とみなす)のように使う。 overall
'scientific'の部分は副詞化するのは困難なので、頭の中で副詞化しておく。そのようにして読みかえてみると、ハハァ、我々が物の世界について。。.と考えて、その考え方が
overallにいわゆる scientifcなのだな、というぐあいに話がはっきりしてくる。 1.の方も、同じようにする。つまり
We picture ourselves as human beings
のように大まかに読みかえておいて、ハハァ、我々は自分自身を「人間」として心に描き、その pictureが常識的に一定のものになっているんだな、というぐあにとらえる。このようにすると、こりかたまった名詞句をわかりやすくときほぐすことができる。
下線部の関係代名詞 whichは、単数形の isが続いているので、先行詞をa certain commonsense pictureと決定できる。ここのところは
We haveX <which is very hard to square withY>.
となっていて、X=1,Y=2となっている。結局、この1文の中には、大まかに言って次の4つの文が押し込められていることになる。
1. We have a certain commonsense picture.
2. We picture ourselves as human beings.
3. That picture is very hard to square with ....
4. We conceive of the physical world as ...
文章の後ろの方にある a world that ...の部分は
a world that (science tells us) consists (entirely) of ...
と読む。これは
Science tells us (that) it<=a world> consists of ...
という文の外側の主節が、関係詞節の中になかま入りした構造。
【訳しかた】
理解した結果をもとにして全体をまとめる。
【全訳と解答例】
目下最大の問題は次のことだ。私たちは人間というものはこういうものだというように、ある一定の常識的なイメージを心に描くが、そのイメージと、物の世界について私たちが大まかに抱く観念とが、なかなか一致しがたいことだ。私たちは人間を、意識というものを持ち、自由で思慮深く、理性のある行為者ととらえるが、そのまわりの世界はというと、心というものもないし、意味というものとも無関係な、物の小片からすべて成っていると科学は説明する。
【問題32】<美と真理>次の下線部を訳しなさい。
If
we take an average day in the life of the average man we seem to see
very little evidence of concern with the science and the arts.
Unless we happen to be professional scientists, laboratory experiments
and formulae have ceased to have any meaning for most of us; unlesswe
happen to be poets or painters or musicians− or teachers of literature,
painting, and music− the arts seem to us to be only the concern of
school-children. (東北大学)
【語句ノート】
□ average「平均的な」
□ evidence「形跡、証拠」
□ concern「かかわりあい、関心事」
□ unless〜「〜でないかぎり」
□ happen to〜「たまたま〜である」
□ laboratory「実験室」
□ experiment「実験」
□ formulae「化学の構造式」(formulaの複数形)
□ cease to〜「〜しなくなる」
□ poet「詩人」
□ literature「文学」
【構文の把握】 下線部の文は ifの節が the average manまで、主節が we seem以下。動詞 seeの目的語<very little ...>の中に名詞化形がある。抜き出してみよう。
very little evidence of concern with the science and arts
evidence of〜の ofは「同格」の ofととらえておこう(【問題6】参照). of以下を同格の that節を用いて書き換えれば
evidence that he has been concerned with the science and arts
となる。この
that節の中の文が、名詞化して<concern with〜>となったわけで、つまり<concenr
with〜>の名詞化形は、具体的にいうと the average man is concerned
with〜という意味、「平均的な人間が〜にかかわりあっている」という意味だということがわかる。こう読みかえると、話がわかりやすく具体的になる。だから訳にも、この読みの結果を反映させた方がよい。 後ろの方に出てくる
teachers of literature, the concern of childrenも名詞化形。読みかえはそれぞれ次のようになる。
teacher of literature⇒ We teach literature.
the concern of children⇒ The arts concern children.
「芸術はこどもの関心事だ」
動詞 concernはこのように、<(ものごと) concern (人)>,あるいはひっくりかえして<(人) be concerned with (ものごと)>という構文をとったりする。
【訳しかた】 If we take〜の takeは「(いくつかあるものの中から選んで)取り上げる」の意味のもの。 if節全体は「平均的な人の人生の中の平均的な1日を取り上げてみると(取り出してみると)」ということ。
very littleの littleには否定的意味が含まれている。
evidneceは「証拠」というと少し大げさになるので、「跡」とか「形跡」くらいがよいだろう。
evidence ofの ofは同格の
ofの公式的な訳しかたである「という」を使うとよいが、ただし、その後を、直訳でいうと「concernがあった」、意訳でいうと「〜にかかわった」、というような文の形にしないと、続きにくくなる。 the
scienceと the artsはそれぞれ theがついている。この theは「〜というもの」の意味の、いわゆる「総称の
the」(【問題21】the child,【問題26】the
mother参照).「総称」とは、その名詞によって表されているものごとの種族に属するすべてをひっくるめて呼ぶ呼びかたで、 the
artというと音楽、絵画、彫刻、建築などすべてをひっくるめて「芸術」と呼んでいることになる。日本語では「〜というもの」と訳されることもあるが、単にたとえば「芸術」と言っても総称の意味は出るので、あまりこだわる必要はない。英語の総称の言いかたとしては、
<the+単数名詞>,<a+単数名詞>,<theなし複数形>,<the+複数形>がある。従って
the arts = the art.
【全訳と解答例】
平均的な人間の平均的な1日をとると科学や芸術にかかわっている形跡がほとんど見られないようだ。科学を職業とする者でもなければ、たいていが実験室での実験や化学の構造式に意味を見いだせなくなってしまっている。詩人や画家や音楽家や、あるいは文学・絵画・音楽の教師でもなければ、芸術は単に学童の関心事にしかすぎないと思えるようになっている。
【問題33】<映画>下線部を日本語に訳せ。
To have seen the latest hit movie, particularly in the first weekend of release, is a minor form of prestige; but more importantly, it is an absolute guarantee of admittance to conversation with others.
We even use scenes from films as analogies to real life situations, or
use dialogue from movies as a common means of expression understood by
all. (横浜市立大学-文理・医)
【語句ノート】
□ latest「最近の」
□ hit movie「ヒットした映画」(hit=「当たり」)
□ particularly「とりわけ」
□ release「封切り」
□ a form of〜「一種の〜」
□ minor「たいしたことのない、小さな、ちっちゃな」
□ prestige「威信、名声、声望」
□ importantly「重要なことに、見過ごせないことに」
□ absolute「絶対の、絶対的な」
□ guarantee「保証、保証する」
□ admittance「入場許可、入ることの許可」(動詞は admit)
□ scene「場面」
□ analogy to〜「〜に似たもの」
□ situation「状況」
□ dialogue「(劇・小説などの)対話(の部分)」
□ common「共通の」
□ means「手段」
□ expression「表現」
【構文の把握】
下線部の名詞化形は
<guarantee of <admittance to <conversation with others>>>
と解析できる。
勉強が進んでいれば、並んでいる英語を見て、その順にすぐに具体的なイメージを描くこともできるだろうが、そうでないときには、いちばん内側のかっこの中から意味を取っていくことになる。名詞のまま訳語として並べたとしても、まったくおかしな日本語にしかならないのはあきらかだから、これもひとつひとつ読みかえて自然な訳語を求めるようにする。 まず、conversation
with othersは「ほかの人との会話」であるが、「ほかの人と会話する」のように動詞的に意味をとらえておく。次に admittance
to〜は、「〜に入る許可」であるが、「〜に入ることができる」と読んでおく。
guaranteeの部分は「保証してくれる」と読む。このように動詞形にして読むと、意味の映像が vividになる。
it isの itは、セミコロン(;)の前の文のSであるところの<to have seen〜>を受けている。 butで前後に分けて、対比的にとらえると
<X isA> but <it isB>
↓
X
という形が見えるだろう。そうとなれば、 itが指しているのはAではなく、Xなのだということがわかるだろう。
【訳しかた】 more importantlyの importantlyは、文を修飾する「文修飾の副詞」。 文修飾の副詞はよく「〜なことに」と訳される。文を修飾するということの意味は、
More importantly, <it isB>.
ならば、
<it isB>のところを修飾するという意味。つまり「もっと重要なことに、それはBである」ということになっている。 More
importantlyという文修飾副詞が it isBの文の内容に対する話者の判断を示していることに注意しよう。
a minor form of prestigeとは、 prestige「社会的威信」にもいろいろあるが、そのうちでもマイナーな威信、ということ。 formは「形態、種類」という意味だが、 a form of〜で「一種の〜」の意味になることがある。
第2文は動詞句が2つ接続詞
orでつながれている。 scenes from filmsは fromが「〜に由来する」の意味で、「映画の場面、映画にあった場面」ということ、
analogyとは「類似物」ということ。従って、前半は「映画の場面を実際の人生の状況に似たものとして使う」という意味になり、具体的には自分を寅さんにしてみるとか、寅さんにああいう場面があったけど、いまがそれに似ているからあてはめてみようとかいうことを言っている。
【全訳と解答例】
最近ヒット中の映画を封切りの最初の週末に見たなどということは、たいしたことではないけれども一種の威信になるが、もっと重要なことは、ひととの会話に入る糸口を完全に保証してくれるものとなることだ。私たちは映画の中の1シーンを現実の人生の状況に似たものとして使ったり、映画のせりふをだれにもわかる共通の言いまわしとして使ったりすることさえある。
↑TOP
【問題34】<言語と文学>下線部を日本語に訳せ。
One of the most obvious practical needs we have is to be able to communicate. It
is worth asserting again the need to distinguish the concept of
language, as something as necessary to us as our limbs or our most
essential man-made tools like spades and kettles, from that of
literature. Literature, being a form of art, unlike language, is dispensable. (大阪大学)
【語句ノート】
□ obvious「すぐわかる、明白な」
□ practical「実際的な、現実的な」
□ needs「必要とする物(こと)」
□ communicate「意思を伝えあう」
□ it is worth〜ing「〜するだけの価値はある」(=it is worth while〜ing)
□ assert〜「〜を主張する」(assert that〜のようにも使う)
□ again「あらためて」
□ distinguish〜 from ...「〜と。。.を区別する」
□ concept「考え、観念」
□ limb「手足(の1本)」
□ essential「欠くことのできない」
□ tool「道具」
□ spade「鋤(すき)」
□ kettle「やかん」
□ unlike〜「〜とは違って」
□ dispensable「なしですませられる」(⇔indispensable)
【構文の把握】 It is worth〜ingは、真の主語〜ingのかわりに仮主語の itをあらかじめ主語としてたてた構文。 assertされるのは<the need to〜>(〜する必要)である。この同格用法の不定詞の中身は
distingushX fromY
の型になっている。挿入句をとばしてみると
X = the concept of language
Y = that of literature
とわかる。
that=the conceptである。 この thatは
oneとペアで覚えるべき指示語で、oneが<a+名詞>の繰り返しを避けるために使うものであるのに対して、<the+名詞>の代わりに使うもの。指示される名詞が複数形のときには
oneは onesとなり、thatは thoseとなる。なお、thisや itに、この用法はない。
修飾語句がつく場合には、<that
of〜>, <those of〜>の形をとることが圧倒的に多いが、<that which〜>,
<those
who〜>のように関係詞が後続することもある。また、過去分詞や、その他の形容詞的語句が続くこともある。修飾語句がつかない用法で重要なものに、
<and that ...>がある.「しかも」とか「それも」という意味。たとえば次の例文を参照。
He'll give you advice, and that very often.
「彼はあなたに助言してくれるでしょう、それもしばしば」
as
somethingから始まる挿入の中には<as〜 as ...>がある。挿入の最初のところの asは「〜として」の意味のもので、
the concept of languageとではなく、 languageと同格関係にある。従って「〜としての」という意味。
asに同格の名詞を導く用法があることに注意。
【訳しかた】
obvious practical
needsは<obvious <practical
needs>>という構造になっている。「すぐにわかる実際に必要なこと」では、まだ直訳。もう少しわかりやすくするには、節あるいは文の形にのばしてみるといい。
assert the need to〜も、「必要を主張する」ではわかりにくいので、少しことばを補って訳したほうがよい。少なくとも「必要があると主張する」くらいにはしたい。
again「あらためて」は、指示されるべき一度目がこの文章中にないので「ふたたび」ではない。
the
concept of languageの
ofは目的格関係を表すもの。conceptとは、あるものごとについて頭の中に育まれたひとつの考え方のことで、概念とか観念とかともいう。「文学についての考え(方)」とするのがよいだろう。
「文学」と聞けば、それについて人それぞれそれなりの考え方をもっているはず。その考え方のことをいう。
man-madeは made by manということ。
【全訳と解答】
実際人間に必要なものなのだとすぐわかることのうちのひとつに、意思を疎通させることができるということがある。人の手足や、鋤、やかんのような基本的な人工の道具と同じくらい人間に必要なものとしての言語を、文学から区別する必要があると、ここであらためて言ってよいであろう。文学は一種の芸術であり、言語とは異なり、なくても困らないものなのだ。
↑TOP
【問題35】<感情の表しかた>下線部を日本語に訳せ。
Emotions
are everywhere the same; but the artistic expression of them varies
from age to age and from one country to another. We are brought up to
accept the conventions current in the society into which we are born. This sort of art, we learn in childhood, is meant to excite laughter, that to provoke our tears. Such conventions vary with great rapidity, even in the same country. (東京大学)
【語句ノート】
□ emotions「喜怒哀楽などの感情」
□ artistic「(活動について言い)高レベルの技術を必要とする」
□ vary「変化する、異なる」
□ bring up「育てる」
□ convention「しきたり、慣習、約束ごと」
□ current「一般に通用している、流布している、流通している」(形容詞)
□ art「高レベルの技術」
□ be meant to〜「〜するはずだ、〜することになっている」
□ excite「(感情などを)起こさせる、かきたてる、そそる」
□ provoke「(笑い・悲しみなどを)起こさせる」
□ tears「涙」(ふつう複数形で用いる)
□ with great rapidity「たいへんな速さで」
【構文の把握】 この下線部は超難問。ポイントが3点ある。
1。指示語。thisは実は、文章中のどの語句をも指示していない。何か指していると思いこんで読むと、どうも変な感じだときっと思えるだろうし、はっきりとは意味がつかめないだろう。
そこで、方針を変えて、別な方向に進もうという気になれるといいのだが、この切替えはだれにとっても少しむずかしい。
thisを後の thatと組ませて this and that「あれこれ、なんやかや」という表現を思いつくことができたらラッキー。ここの
this, thatは、指示するものごとが文章中にではなく、現実の世界の中にある用法のもの。
2。第2の関門は省略構文。<that to provoke...>の部分がそれで、これは前方の This sort...と対比的な配置になっている。
this sort of art is meant to excite laughter
---------------- -------- ------------------
that (sort of art is meant) to provoke our tears
----------------- -------- --------------------
3。3つめのポイントは挿入構文。ただし、ふつうの挿入構文ではなく、主節が主節であることを放棄してその本来の位置から降りてしまったもの。
This sort of art, we learn in childhood, is meant to ....
主節
従属節は下線部以外だから、
We learn in childhood (that) this sort of art is meant to excite
laughter, (and) that to provoke tears.とすればふつうの形になる。
【訳しかた】 文章の内容からすると、話が特に芸術にジャンルが限られているわけではないので、
artは「巧みな技」くらいの意味。 artisticも「巧みな」くらいの意味。 第1文の Emotions are everywhere
the sameは Emotions are the same everywhereに同じ。
emotionsと複数形になっているのは、喜怒哀楽などの1つ1つの感情の集合体とみているから。
from age to ageと from
one country to anotherとは、ふつう「時代により」、「国により」と訳される。 <from〜 to
...>の慣用句には from day to day「日ごとに」、 from door to
door「一軒一軒」など、連続性が感じられる意味内容のものと、 from time to time「ときどき」、 from place to
place「あちこち」など、断続的な意味内容のものとがある。「代々」の意味のfrom age to
ageは前者のなかま。しかし、本文の場合、そのような流れがあまり感じられない。 <one〜
another〜>のセット表現と<from〜 to ...>が組むと、後者の断続的な方になる。それで、 from one
age to anotherとは言わない。 from country to countryとは言う。
We are brought up to accept〜の不定詞は「結果」の意味のもの。
【全訳と解答例】
喜怒哀楽の感情は世界のどこにいっても変わらない。しかし、その巧みな表しかたとなると、時代により、また国により、さまざまだ。人は、生まれた社会で現在通用している約束ごとを受け入れるように育てられる。こういう手を使えば笑いを誘うはずだとか、ああいう技を使えば涙をそそることになっている、とかいうことを私たちはこどもの頃覚える。そのようなしきたりは、同じ国においてもかなりのスピードで変化する。
【問題36】<宵>下線部を日本語に直せ。
The
night was young, and so was he. But the night was sweet, and he was
sour. You could see it coming from yards away, that sullen look on his
face. It was one of those sustained angers, pent-up but smoldering, that
last for hours sometimes. It was a shame, too, because it was out of tune with everything around him. It was the one jarring note in the whole scene. (玉川大学-英文学科)
【語句ノート】
□ young「(時期的に)早い、更けていない」
□ sweet「快い」
□ sour「不機嫌な」
□ sullen「むっつりした」
□ look「表情」
□ sustained「じっとこらえられている」(sustain「こらえさせる、〜に耐える」
□ pent-up「うっ積された」(pentは pen「閉じ込める」の過去分詞)
□ smoldering「心にくすぶる」(形容詞)
□ last「続く」(動詞)
□ for hours「何時間も」(=for many hours)
□ shame「恥ずべきこと、恥ずかしいこと、恥ずかしさを与えること、残念なこと」
□ out of tune with〜「〜と調和していない」(tune「調和」、もともとは音の協和のこと)
□ jar「耳障りな」
□ note「音色、調子」
【構文の把握】 下線部の構文は特にむずかしいところはない。
It was a shame, too「それはまた恥ずかしいことでもあった」が直前の文 It was one of
those〜「それはあの〜のうちのひとつだった」に重ねられて tooと言われていることに注意するだけでよい。
【訳しかた】 重要なのは、連続している
itの内容をとらえること。この連続は You could see itの itから始まる。この
itの指す語句をまずつきとめなければならない。 itは多くの場合、それよりも前にある語句や、その内容を指す。この考えかたでいくと、 it =
the nightとなるが、これは完全に誤解でしかない。 では何か? 仮目的の itを思い出そう。たとえば I take it for
granted that you work hard.(あなたが一生懸命勉強するのを私は当然のことと思っている)の中の itのことだ。この
itは、 <it = that〜>で、不定詞の内容を前もって代表しておくもの。仮に目的語として置かれるものなので「仮目的の
it」と呼ばれる。 それと同じで、itは実はあらかじめ that sullen look on his
faceの代わりになっている。少し違うのは、 thatの節ではなく、名詞句だということだけだ。
itは、この青年のむっつりした表情のことを言っている。そしてそれが one of those sustained angers
...と続いていっている。 those sustained angers(あの、怒りをじっと抑えている表情)の thoseは、前問の this,
that同様、文章中に指示する対象がなく、指示対象が外部世界にあるもの。誰でもよく知っていると(筆者には)思われるので、ことばで説明的に言い表すことはしないで、直接指したのである。 angerはふつう単数形で使われる。ここで複数形になっているのは、表情を意味する
itの補語として、「怒りの表情」という具体的な意味に変えて使っているので、普通名詞化したと考えられる。 <one = a
look>ととらえられる。 その表情を a
shameととらえたのは、この小説の語り手。ここで青年と夜を紹介している語り手が「恥」ととらえたのだ。なぜなら、あたりにそれがそぐわなかったから、と続いている。 始まりのところに戻ってみよう。The
night was young, and so was
he.は背景のセッティングをしている。「夜はまだ浅く、彼は若かった」とは、時間と人物について、
youngという語をかけことばにして紹介する表現だ。そして、すぐ後に重要な展開がある。 But the night was sweet, and
he was
sour.「夜はここちよかったのに、彼は不機嫌だった」。 人物と背景の違いがそのように明らかだったので、青年のそのむっつりした表情のやって来るのが何ヤードも先から目に見えた、のだ。
lookが comeするというのは、少し文法破りだ。文法破りすると、表現がおもしろくなることが多い。 couldはふつうの過去形。
youは「(一般に)人」の意味。
【全訳と解答例】 夜は浅く、彼もまた若かった。だが、夜はここちよく、彼は不機嫌だった。彼の顔の、そのむっつりとした表情のやって来るのが、何ヤードも先から見えた。それは、鬱積されながらもくすぶり、ときとして何時間も続く、あの怒りを押し殺した表情のうちのひとつだった。また、それは、恥ずかしいことでもあった。なぜなら、あたりすべてに不協和だったからだ。景色全体の中で、たった一つ調子っぱずれだった。
【出典】 William Irish, Phantom Lady
【問題37】<日常生活>下線部を日本語に訳せ。
Harry's
work was nearby. Just two blocks away there was a cluster of stores
where Isabel liked to do all her shopping for the house. Having every
thing so close, they had not found it necessary to own a car− not
necessary or feasible. Harry's work had never amounted to more than
holding down a job at the wire-mesh plant, but living always where they did and as they did, they had never suffered any real hard-ship. (横浜市立大学文理・医)
【語句ノート】
□ work「職場」
□ nearby「すぐ近くに」
□ block「ブロック」
□ cluster「群れ、団、房」
□ feasible「実行できる」
□ amount to〜「(ある状態に)達する、結局〜になる」
□ more than〜「〜以上」
□ hold down「(地位などを)保ち続ける、 (仕事などを)うまくやり続ける」
□ wire-mesh「金網」
□ plant「工場」
□ as〜「〜のとおりに」
□ suffer「(苦しみなどを)経験する、 (損害などを)受ける、 (否定文で)〜に耐える」
□ hardship「苦難」
【構文の把握】 下線部は分詞構文。代動詞 doが2つ重なっっているが、どちらも動詞 liveの替わりをしている。分詞構文を節に変え、代動詞を動詞に戻し
Since they lived always where they lived and as they lived
として考えよう。 alwaysは最初の livedの前にあるならふつうの用法だが、この位置にあると、 <where they lived>と<as they lived>の両方にかかっていることになる。 後半は、受験生がよく暗記する
Living as I did in the country, ....
(田舎に住んでいたので。。.だった)
という、分詞を強調した分詞構文に似ているが、別物なのでだまされないようにしよう。 <a cluster of〜>は「〜の群れ」で、この語句の中心は cluster.それで there wasと単数で受けられている。
they
had not found it necessary to〜は仮目的の itを含む構文だが、その後の not necessary or
feasibleは<notX orY>の形で、意味は両方とも打ち消しであることに注意。必要とも思わなかったし、
ownすることを実行できもしなかった、買えなかった、ということ。
【訳しかた】
lived always where they livedは、引っ越しもしないで同じ場所に住んだことを意味する。一般にアメリカ人は引っ越し好きなので、とりたてて言っておかしくないこと。
lived always as they livedは、 <as〜>が「〜のとおりに、〜のように」の意味のものなので、「そのとき暮らしていた状態そのままに暮らしていた」ということ。特に生活に変化を求めはしなかったことを言っている。
Harry's
work had never amounted to more than holding down a jobに含まれる<never
amount to more than〜ing>は、直訳すると「決して〜すること以上には達しない」ということ。 hold down a
jobの「一つの仕事をうまくし続ける」という意味と組み合わせると、昇進することもなく、工場システムの一歯車として単調な仕事を可もなく不可もなく無事に続けて来た、ということがほのめかされているとわかる。
wire-mesh
plantは「金網工場」。 wireが「針金」、 meshが「網」。「金網」といっても、フェンスの材料になるような大きなものだろう。
plantは「機械装置、工場設備」の意味から転じて「工場」の意味になったもので、装置や建物など一式全部含めた意味が強い。
real
hardshipは「ほんものの苦難」。 sufferはこのとき、「味わう、経験する」の意味。 had never suffered any
real hard-shipは「そのときまでほんものの苦難というものを味わったことは一度もなかった」ということ。【全訳と解答例】
ハリーの職場は家からすぐ近くにあった。ほんの2ブロック先にちょっとした商店街があって、イザベルは家のための買い物全部をそこでするのが好きだった。近くになんでもあるので車を持つ必要はなかった。不必要だし、買えもしなかった。ハリーの仕事は金網工場での単調な仕事にとどまるばかりで、それ以上になることがなかったが、ずっと今のところに住んできたし、暮らしているままに暮らしてきたので、ほんとうの辛苦というものを味わったことはなかった。
↑TOP
【問題38】<アメリカ人とサービス>下線部を日本語に訳せ。
Since
the United States is a "do-it-yourself" country, we generally carry our
own bags, take our laundry to the laundromat, stand in line at the
grocery store, or shine our own shoes, whoever we may be−lawyer,
professor, bank president, or corporate executive. Service in the States
is purely a matter of cold cash; it has nothing to do with respect,
position, race, nationality, or personality. Whoever can afford the extremely high cost of service in this country, and wants to buy it, may. (青山学院大学国際政治経済学部)
【語句ノート】
□ do-it-yourself「ちょっとしたことなら他人に頼まずに自分の手でする、しろうとが自分でやる」(こういった主義のことを do-it-yourselfismという)
□ generally「ふつう、一般に」
□ launtdry「洗濯物、洗濯屋」
□ laundromat「コインランドリー」
□ in line「一列になって、並んで」
□ grocery store「食料雑貨店」
□ shine「磨く」
□ lawyer「弁護士」
□ bank president「銀行の頭取」
□ corporate executive「会社の重役」
□ purely「まったく、単に」
□ cold cash「現金」
□ have nothing to do with〜「〜と関係がない」
□ race「人種」
□ nationality「国籍」
□ personality「人柄、人格」
□ can afford〜「〜の余裕がある」
□ extremely「極端に」
【構文の把握】
ポンと
mayが投げ出されていてとりつくしまがないように思える。しかし、省略構文は必ず元に戻すことができる。「復元可能」でなければ、そもそも省略構文にすることはできないのだから。必ず読める、読んでやるという気持ちが大切。 <whoever〜>の節が2ヶ所にあって、それぞれ用法が異なっている.whoever
we may be− lawyer, professor,
...の<whoever〜>は「私たちが誰であれ」という意味のもので、「譲歩」の副詞節。この副詞節は、その前の文全体を修飾している。だから、文修飾の副詞にあたる。 もうひとつは下線部にある。Sの後にカンマが置かれているが、このカンマは実は副詞節を区切るものなのではない。分析すると下線部の文は
<Whoever canv1 andv2> <may (v3)> .
S V
という、SVの文型の文。動詞v3は省略されているが、v1とv2は
v1=can afford the extremely high cost of service in this countryv2=wants to buy it
である。
<whoever〜>は文のSになっている。Sになるということは名詞的にはたらいているということだから、これは名詞節。頭でっかちの構文にしてもあまりにものものなのでSの後にカンマの区切りが入れられたのだ。 省略されているv3はなんだろう?「省略」は「代用」に似ている。繰り返しを避けるために省略する。従って、遠くにある語句を指してそれを省略することはない。v2を飛び越えた、そのまえのv1が省略対象になることはない。v3はv2の中にあるはず。
v3=buy it
である。
【訳しかた】 buy itの itは serviceを指している。 serviceは形のないものだが、対価を支払わないと手に入れることはできないから、やはり buyするもののうちの一つ。
the cost of serviceは「サービスの代価」。 costは動詞としては「(費用が)〜だけかかる」と訳されるが、名詞としては「代価・価格・値段・費用」などと訳される。
can
affordは後に名詞または名詞的用法の不定詞を伴う。「〜する余裕がある」のように動詞を補って訳さないと、うまくいかない。ここでは costが
affordの目的語になっているので、「払う」という動詞を補って訳す。 a matter of cold cashの
matterは「問題」。
【全訳と解答例】
合衆国はなんでも自分でする主義の国なので、弁護士であれ、大学教授であれ、銀行の頭取や会社の重役であれだれであれ、ふつう自分の鞄は自分で持ち、洗濯物はコインランドリーに持っていき、食料雑貨店では列に並び、靴は自分で磨く。合衆国ではサービスはまったく冷たい現金で決まる問題である。尊敬や地位、人種、国籍、人格とは関係がない。我が国のひどく代価の高いサービスにお金を払う余裕があり、お金を支払ってまで、そのサービスを受けたいと思う人なら、そうするかもしれない。
↑TOP
【問題39】<英語>下線部の斜字体にした thatの内容が分かるようにして日本語に訳せ。
It
would be a mistake to presume that English is widely spoken in the
world because it has some overwhelming intrinsic appeal to foreigners.
Most people speak it not because it gives them pleasure to help out
American and British monoglots who cannot be troubled to learn a few
words of their language, believe it or not, but because they need it to
function in the world at large. They may like a few English words
splashed across their T-shirts and shopping bags, but that isn't to say that that is what they want to relax with in the evening.
*monoglots=people who know only one language (慶応義塾大学医学部)
【語句ノート】
□ presume that〜「(たぶん)〜だと思う」
□ overwhelming「圧倒的な」
□ intrinsic「本来備わっている、本質的な」
□ appeal「魅力」
□ help out〜「〜のために少し働く」
□ be troubled to〜「わざわざ〜する、労を惜しまず〜する」(=trouble oneself to〜)
□ believe it or not「まさかと思うだろうが、信じられないだろうが、うそのような話だが」
□ function「役目を果たす」
□〜 at large「〜全体」
□ splash「まだら模様をつける、はねをかける」
□ relax「くつろぐ」
□ that is to say「すなわち」
【構文の把握】 <that isn't to say that〜>は、慣用句になっている<that is to say〜>を慣用句以前の形に戻して、否定文として使ったもの。 <that is to say〜>は
X、 that is to sayY「X、すなわちYだ」
のようにXの内容をさらに詳しく述べたり、意味をもっとはっきりさせたりするために使う。「すなわち」が慣用句としての意味だが、直訳すると「それは〜ということだ」になり、その否定は「それは〜ということではない」となる。 whatで始まる関係詞節は、文の形に戻して頭に入れておこう。
They don't want to relax with〜 in the evening.
という文である。問われている thatは文型からして<what〜>に等しいのだから、 thatはこの文の中の<〜>とも等しい。
They may like a few English words splashed〜は、 <S likeO (過去分詞)>のSVOCの文型の文。
【訳しかた】 but that isn't to say thatのところは、「しかし、だからといって〜だということにはならない」となる。
They may like〜の部分は、SVOCの典型的な訳しかた「SはOがCになっているのをVする」で訳す。直訳すると「彼らは少しの英語がTシャツやショッピングバッグの上にばらまかれているのを好むかもしれない」。
thatは
a few English words〜 and shopping bagsを指している。 that isn't to
say以下では、夜くつろぐときになってまで、昼間のTシャツとショッピングバッグ姿ではいないし、もちろんその上の英語ともつきあってはいないということが言われている。
American and British monoglots who〜 their languageの部分の theirは American and British monoglotsを指していない。それより離れた most peopleを指している。
believe it or notは命令形の慣用句。「信じられないかもしれないが」という意味で、その前の<cannot be〜 their language>にかかっている。
【全訳】 英語が世界中で広く話されているのは、なにか本質的な、外国人に対しての圧倒的な魅力が英語にあるからだ、と思うのはまちがいだろう。たいていの人々が英語を話すわけは、英語しか話さないアメリカ人やイギリス人がいて、信じられないかもしれないが、彼らは少しの外国語をわざわざ習うことができない、それで、そういった人たちの手助けができれば嬉しいと思うから英語を話すのではなく、世界中で英語が役に立つ必要があると思っているからである。たいていの人々は2言3言の英語がTシャツやショッピングバッグの上に大きく書かれているのを好むかもしれないが、だからといって夜をそういうものとともにくつろぎたいと思っているわけではないのだ。
【解答例】
だからといって夜をTシャツやショッピングバッグの上に大きく書かれた英語とともにくつろぎたいと思っているわけではない。
【問題40】<精神現象の本質>次の文章を日本語に訳せ。
Why
is it that so many theorists eventually try to deny the intrinsically
mental character of mental phenomena? If we can answer that question, we
will understand, if only partly, why the mind body problem has seemed
so intractable for so long.
(注) the mind-body problem:心身問題。精神と身体の関係を問う議論。 (神戸市外国語大学)
【語句ノート】
□ Why is it that〜?「〜はどうしてか」
□ theorist「理論家」(← theory+ist)
□ eventually「結局は」(event+ual+ly)
□ deny「否定する」
□ intrinsically「本質的に」 (形容詞は intrinsic)
□ mental「精神の」
□ character「性格」
□ phenomenon「現象」(複数形が phenomena)
□ if only〜「たとえ〜だけだとしても」
□ partly「少しは、部分的に、いくぶん」
□ intractable「扱いにくい」
【構文の把握】
第2文の構文は
why〜の間接疑問の節が動詞 understandの目的語になっている。 if only〜や if any, if ever, if
notなど、文中に挿入して用いる弱小語句は、例外もあるが、たいていは丸暗記しておかなくても省略を補いさえすれば意味がとれる。ここの if
onlyも
if only partly = if we will understand only partly
と考える。ifは even ifの意味。短い if〜の挿入句のうち、主なものは次のとおり。
・if any=「たとえいくらか〜としても、もしいくらかでも〜なら」
There are few, if any, mistakes.「誤りがあるにしても少ない」
・if ever=「たとえする(ある)としても」
He seldom, if ever, goes out.
「彼が出かけることは、たとえ何度かはあるとしても、めったにない」⇒「彼はまずめったに出かけない」
・if not〜=「たとえ〜でないにしても」 That's a good book, if not the best one.
「最高とは言えないにしてもいい本だ」
・if anything=「どちらかと言えば」
John, if anything, was an honest man.
「ジョンはどちらかと言えば正直な人だった」
最初の Why is it that〜?は強調構文。これはたとえば
┌────────┐
It was│becuase he lied│ that he was punished.
└────────┘
「彼が罰せられたのはうそをついたからだった」
という強調構文において強調されている<because〜>の句のところを、
whyによって聞くものと考えるとわかりやすいだろう。 <because〜>を whyに変えて文頭に出し、 It wasを Was
itの疑問文の語順に変えると、同じパターンになる。ふつうの構文にすれば
Why do so many theorists eventually try to deny the intrinsically mental character of mental phenomena?
ということ。
【訳しかた】 if
only partlyの ifが even ifの意味であることに注意する。
partlyは「部分的に」と訳したくなる気持ちを抑えて「いくぶん」とか「少し」とかにした方がよい。 so longの
soは「それほど、これほど、あれほど」にあたる。このうちどれを選ぶかは文脈による。ここでは直前にある現在完了形 has
seemedに合わせる。この現在完了は現在までの継続を言っているものだから、「これほど」とするのがよい。
【全訳と解答例】
精神現象の本質的に精神的な性格を結局のところ否定しようとする理論家がこれほど多くいるのはどうしてなのだろうか。この問いに答えることができるならば、精神と身体の問題がなぜこれほどまでに長くにわたって、たいへん扱いにくく思われてきたのか、その理由がいくぶんはわかるだろう。
【問題41】<科学>下線部を日本語に訳せ。
Through
all history, science and technology did advance and did, in so doing,
alter society.(Consider the use of fire, for instance, or the invention
of printing with movable type.) Through most history, however, those
changes progressed so slowly in time and spread so slowly in space that,
within an individual's own lifetime, no change was visible. (徳島大学-総合科・医・歯)
【語句ノート】
□ technology「科学技術、テクノロジー」
□ advance「進歩する」
□ alter「変える、変わる」
□ consider「〜を考えに入れる」
□ for instance「たとえば」
□ printing「印刷(術)」
□ movable type「組み替えできる活字」
□ however「しかしながら」
□ progress「進む、進行する、進歩する」
□ spread「広がる、広まる」(spread-spread-spread)
□ an individual「一個人」
□ lifetime「一生(のあいだ)」
【構文の把握】
めだつ挿入語句が3つある。
1.強調の助動詞 didと動詞 alterから成るVに割り込んでいる in so
doing
2.最初からかっこに閉じ込められている Consider ...の文
3.最後の that節中に割り込んでいる within an individual's own life timeの句
である。1.の挿入は単なる補足。 2.は、例をあげて読み手になるほどと思わせようとしたもの。3.は、挿入部分を強調するためのもの。
3.の thatをはずしてみよう。
Within an individual's own lifetime, no change was visible.
となるが、これは
No change was visible within an individual's own lifetime.
という通常の語順よりは<within〜>の部分が強調された言い方になる。
in so doingは do so(そうする)が<in〜ing>(=while〜ing)の中の動名
詞として使われたものだが、このとき in doing soとするより、この語順を取るのがふつう。 So saying, ...(そのように言って。。.)や so called(いわゆる), so to speak(いわば)などにも、この語順は見られる。
【訳しかた】 下線部の構文の大枠は<so〜
that ...>で、これは「たいへん〜なので。。.」とやればよい。
soは2つあり、どちらも<SV+副詞>の副詞についている。 changes
progressedは「変化が進行した」ということ。「変化が進歩した」ではおかしい。 spreadは過去形。
in timeと in spaceとは time and space「時空」のように、対照的に置かれていることに注意する。「時間において⇒時間的に」「空間において⇒空間的に」と考える。
within
an individual's own lifetimeの ownは、 his own〜(彼自身の〜)などの ownと同じ使い方のもの。
ownはそもそも形容詞で、たいてい、人などを表す名詞・代名詞の所有格の直後に置いて使う。もともとの意味は<A's
own〜>=「ほかのものではなくAのものである〜」ということで、「A自身の〜」や「A独自の〜」などと訳されるが、結局は「〜の」という意味を強めるだけのものなので、「一個人自身の〜」などとして日本語として奇妙ならば、特に訳し出す必要はない。
most
historyについては、冒頭の all historyから考えよう。これは<all+単数名詞>の形である。このとき、 allは
wholeの意味だから、かなり抽象的ではあるが、 all historyは「全歴史、歴史全体」ということになる。 most
historyはその全歴史の大部分ということ。 historyはたとえば a history of Japanというと「日本の歴史を書いた本」、
the history of Asiaというと「アジア史」のように使うが、本文ではもっと抽象的にとらえている。【全訳と解答例】
歴史全体を通して、科学ならびに科学技術は、たしかに発達してきたし、発達しながらたしかに社会を変革してきた。(たとえば火を使用したことや活字一本一本の組み替えが可能な印刷術の発明を考えてみればよい)しかしながら、歴史上たいてい、そのような変化は時間的にもたいへんゆるやかに進み,空間的にも非常にゆっくりと広がったので、個人の人生の枠内では、変化はまったく目に見えないものだった。
【問題42】<空想と科学>次の文章を和訳せよ。
To
the nineteenth century science was an imaginatively exciting and
somewhat disturbing element of life; what the future might be, or what
the present ought to be, in the light of science's ability to change
things, fascinated the thinkers of the age. Fiction of fantasy− that is,
of the unexplained impossibility− is of course as old as fairy tale and
myth. Fiction of science− of the explicable possibility− depended on
the post-Newtonian world's faith in science's ability to explain and
shape experience. (奈良女子大学)
【語句ノート】
□ imaginatively exciting「想像力をそそる」
□ element of life「人生の要素」
□ in the light of〜「〜に照らして、〜を考えに入れて」
□ fiction「フィクション、虚構」
□ unexplained「解明されていない、不明な」
□ impossibility「不可能なこと、ありえないこと」
□ fairy tale「妖精物語」(翅があったりする想像上のたいへん小さくて繊細な女性のことを fairyといい、その fairyの登場するおとぎ話を fairy taleという)
□
the post-Newtonian world「ニュートン後の世界」(post-は「後の」という意味の接頭語。例:
postwar「戦後の」。 Newtonianは Newtonの形容詞形。Newtonはおなじみの Sir Isaac
Newton(1642-1727)のこと)
□ shape〜「〜に明確な形を与える」
【構文解析】
what the future ..., what the present ..., in the light ...の部分は並列構文。カンマがあっても挿入ではない。挿入構文なのは2か所あるダッシュ(−)で囲まれた部分。
最初の挿入句の中には、that is「すなわち」という語句がさらに挿入されている。意味からして明かなとおり、ダッシュの中身は直前の語句 of fantasyの fantasyについて説明を補っている。
Fiction of fantasy− that is, of the unexplained impossibility− is ....
形式的にも対応していることから
fantasy = the unexplained impossibility
という関係にあることをつかむ。2つめの挿入句も同じはたらき。
最後の explain and shape experienceは共通構文。
<explain experience> and <shape experience>
V O V O
の共通部分(O)が1回で済まされ、共通でないVがくくられたもの。
【訳しかた】
to
the nineteenth centuryは「19世紀に至るまで」の意味。 toは到達点を表し、ほぼ
tillと同義。ただし、日本語の「〜まで」は「〜」まで含んでしまうこともあるので訳語に注意する。 element of
lifeは、信仰、社交、娯楽、芸術などとともに「人の世を構成する要素」という意味にとる。
what the future might
beと what the present ought to beは what Japan is
now(現代の日本)のような関係詞の節なのか、それとも疑問詞の節なのか区別するのがむずかしいが、 in the light
of〜という挿入節があるので、どちらかというと、関係詞節ほどには固まっていない疑問詞の節と考えることができる。つまり、それぞれ、元 What
may be the future in the light of〜?と What ought the present to be in the
light of〜?という疑問文だったと考えられる。訳もそれに合わせる。
in the light of science's ability to change thingsは「科学にものごとを変える力があるという事実を考えに入れて」あるいは「。。.を考えると」ということ。
【全訳と解答例】
19世紀以前には、科学は人の世の要素のうち、空想をかきたて、多少人を不安にさせるものであった。科学にはものごとを変える力が確かにあるが、そのことを考えに入れると、いったい未来はどうなっているのだろうかとか、現在はどうあるべきなのか、とかいうことに、当時の思索家たちは魅惑された。空想−すなわち、ありえない未解明のこと−から生まれるフィクションはもちろん、妖精物語や神話と同じほど古くからある。科学−解明できるありえること−から生まれるフィクションは、ニュートン後の世界が持つようになった、経験を説明し経験に明確な形を与える科学の力への信頼に基づいていた。
↑TOP
□コラム
常識
和訳においては常識に頼ることが重要です。そんなことはあたりまえじゃないかと思うかもしれませんが、実際に和訳するときに、常識に頼る心構えを取るのはあんがいむずかしいことです。 常識といっても、和訳に関係する常識には2種類があると思われます。1つは、世の中のいろいろなものごとについての知識そのものです。もう1つは、論理や思考に関係する常識で、ある1つの論理や思考があったときに、次にはおそらくこういう展開になるだろうと予測できる力のことです。 1つめの、知識そのものである常識についていうと、専門的な深い知識を高校生・浪人生に求めるのはとうていむりであるのに、そのような知識がなければ訳せないような文章が時に出題されることがあります。こども論や比較文化論や環境問題などはわかりやすい方でしょうが、科学や経済、文学論となるとわからないと感じる人が多いにちがいありません。出題する大学側の良識に期待するしかありませんが、それでも、諸君としては、幅広く知識をかじっておく必要はあるでしょう。 英文を読むときに最も必要とされる基本的な常識は、文化・歴史・地理・ことばです。文化には、地域社会や習慣や芸術や学問などさまざまなジャンルが認められ、そのひとつひとつが重要です。それから、英文の場合、宗教
,神、信仰についてもひととおりわかっている必要があります。あちらの社会全体の潮流として、そのようなことが底の方にであっても流れているからです。 2つめの、論理・思考法の常識は、いろいろな文章を読むことによって培われます。日常生活を描写した文章もおろそかにできません。ある程度読んだら、後は自分の中にできた常識を信頼することです。「ああ時間がない、だけどまだ、こっちの意味にするか、それともこっちにするか決められない」というような、土壇場でえんぴつでもころがそうかというような状況に陥ったら、常識に頼って常識に合う方を選んだ方がよい結果につながることが多いようです。独断にだけは陥らないようにしなければなりません。
---------------------------
執筆当時の近影が著書の最後に乗っているのを発見。スキャンして以下に示しました。メガネをかけててまじめそうな好青年でした!